考古学的発見

クー・バン・ケオ ― ジャヤヴァルマン7世ゆかりのクメール施療院遺跡

地形と立地環境

クー・バン・ケオは、修復作業を経て現在も堅固で安定した状態が保たれている古代遺跡です。大きな沼沢地であるノーン・クラトゥム(Nong Krathum)のほとりに位置し、この沼の主要な水源は、チー(Chi)川の支流であるフワイ・カーカン(Huai Kha Kang)です。周辺一帯は地域有数の観光名所として整備されており、クー・バン・ケオは近隣のクー・ノイ・バン・ケオ(Ku Noi Ban Khwao)から東へ約650メートルの地点にあります。

標高

海抜145メートル

水系

ノーン・クラトゥム、フワイ・カーカン、チー川

地質条件

この遺跡は、コーラート台地の白亜紀に属するコーラート層群プー・トック岩相の分布域内、完新世の堆積平野上に位置しています。

考古学的情報

考古学的時代: 歴史時代
時代・文化: クメール時代(バヨン様式)
年代: 仏暦18世紀
遺跡の種類: 宗教関連施設

遺跡の概要

クー・バン・ケオは、クメール王ジャヤヴァルマン7世の治世に、大乗仏教の理念に基づいて建立された「アローギャサラ(Arokya Sala=施療院)」と呼ばれる宗教施設の一つで、仏暦18世紀にさかのぼります。

遺跡はラテライトと砂岩を用いた建造物群で構成され、中心となる主プラーン(塔)1基と、その南東側に建つバンナライ(経蔵)からなり、これらはラテライト製の囲壁に囲まれています。主な構成要素は以下の通りです。

主プラーン(本殿)

ラテライト造りで東向きに建ち、5×5メートルの方形平面を持つ祠堂部には3面に偽扉が設けられ、正面には出入口となる張り出し式の前廊(ポーチ)が付いています。上部構造は仏塔を模した形式で、4層まで積み上げられています。現在、祠堂内部には地元の人々や観光客が信仰の対象とする仏像が安置されています。

バンナライ(経蔵)

主プラーンの南東の角に位置し、西向きの6×7.50メートルの長方形平面を持つラテライト建築です。

ゴープラ(塔門)

十字形の平面を持つラテライト造りの塔門で、10×11メートルの規模を誇り、境内への入口として機能していました。

囲壁

ラテライト製の囲壁は、塔門から主プラーンと経蔵を取り囲むように築かれ、25×37メートルの長方形を描いています。

池

囲壁の外側、北東側に1面の池があります。

発掘調査の成果

1997年に行われた発掘調査では、主プラーンの戸枠から、クメール文字によるクメール語の碑文が発見されました。碑文は仏暦17~18世紀頃のもので、「境内に祀られた仏像を礼拝するよう人々に促す」趣旨が記されています。また、主プラーンの前廊にはサンスクリット語のクメール文字が2行刻まれており、「アシュラム(修行場)の神々を招き、礼拝せよ」と解読されています。文字の成立時期は仏暦16~17世紀頃と推定されます。さらに、壺に収められた銀メッキの仏像が数十体出土しており、これらはランサーン文化期の美術作品とされています。