シェルショック(shell shock)は、第一次世界大戦中に前線の兵士たちに多く見られた心的外傷反応であり、現在でいうPTSD(心的外傷後ストレス障害)に近い概念とされています。当時はその実態が十分に理解されておらず、症状も精神面・身体面の両方にわたって極めて多様でした。
心理的な症状
シェルショックの中核をなすのは、強い精神的ストレスによって引き起こされる心理的症状です。
- 持続的な不安状態と過剰な警戒態勢(過覚醒)
- 戦闘を思い出させる状況や場所の回避
- 睡眠障害——「シェルスリープ」「戦闘の夢」「戦争の夢」と呼ばれる悪夢に悩まされることもありました
- 抑うつ状態と感情の閉じこもり(情緒的な引きこもり)
認知機能への影響
思考や記憶に関わる機能にも明らかな低下が見られました。
- 集中力の低下
- 記憶力・注意力の低下
感覚・神経系の症状
砲撃音などに長期間さらされたことによる、感覚や神経に関わる症状も特徴的でした。
- 聴覚過敏と音恐怖症(フォノフォビア)
- 震えや引きつけ
- チックおよび不随意運動
身体的な症状
心理的な負担は、さまざまな身体症状としても現れました。
- 頭痛
- 胸の痛み
- 動悸
- 吐き気・嘔吐
- 下痢・便秘などの消化器症状
- 食欲不振(アノレキシア)と体重減少
- 尿失禁
- 性機能障害
重篤なケースについて
症状が深刻化した場合には、自殺念慮や自殺行動に至る例も報告されています。当時の医学ではシェルショックは「臆病さ」や「意志の弱さ」と誤解されることも多く、適切な理解と治療が行き届かないケースが少なくありませんでした。
こうした経験は、後にPTSDという概念の確立へとつながる重要な足がかりとなり、戦争が心身に与える深い影響を示す歴史的な教訓となっています。