プロパガンダ運動の三頭政治とは
20世紀初頭のアメリカにおいて、広報(PR)と世論形成の分野を牽引した三人の人物がいます。「プロパガンダ運動の三頭政治」と呼ばれる彼らは、エドワード・バーナイス(Edward Bernays)、アイヴィー・リー(Ivy Lee)、そしてウォルター・リップマン(Walter Lippmann)です。本記事では、それぞれの経歴と思想、現代に残した影響について詳しく解説します。
エドワード・バーナイス(Edward Bernays)
バーナイスは「PR(パブリック・リレーションズ)の父」と称される人物です。
- 精神分析学からの影響:叔父であるジークムント・フロイトの精神分析学から大きな影響を受け、人間の無意識が意思決定に及ぼす力を深く理解していました。
- 大手企業との関わり:アメリカン・タバコ・カンパニー、ゼネラルモーターズ(GM)、ユナイテッド・フルーツ・カンパニーなど、数多くの企業や組織の広報活動に携わりました。
- 「合意のエンジニアリング」の提唱:メディアを活用することで、世論を意図した方向へと形成できるという「合意のエンジニアリング(engineering of consent)」という概念を発展させました。
アイヴィー・リー(Ivy Lee)
リーは「近代PRの父」として知られています。
- 著名なクライアント:ジョン・D・ロックフェラー、スタンダード・オイル、ペンシルベニア鉄道など、当時最も著名な顧客の広報を担当しました。
- 「パブリシティ」の概念:クライアントにとって有利な形でメディアへの情報の流れを管理する「パブリシティ(publicity)」という概念を確立しました。
- 誠実さと透明性の重視:広報活動は誠実さと透明性に基づくべきであると信じており、この理念は現代のPR倫理の基礎となっています。
ウォルター・リップマン(Walter Lippmann)
リップマンはジャーナリスト、哲学者、政治評論家として活躍した知識人です。
- 影響力ある著作:『世論(Public Opinion)』(1922年)や『幻影の公衆(The Phantom Public)』(1925年)など、世論とプロパガンダに関する影響力のある著作を多数発表しました。
- 世論形成のメカニズム:世論は主にメディアとエリートによって形作られ、一般の人々は自らに影響を与える力に気づいていないことが多いと論じました。
- 民主主義と情報の関係:民主主義には十分な情報を持つ市民が不可欠であり、メディアには市民に正確な情報を提供する責務があると主張しました。
まとめ
バーナイス、リー、リップマンの三人は、それぞれ異なるアプローチから世論形成と広報のあり方を探求し、現代のPR業界やメディア研究の礎を築きました。バーナイスの「合意のエンジニアリング」、リーの「誠実さと透明性」、リップマンの「民主主義と情報」の思想は、今日でも私たちがメディアと向き合ううえで重要な視点を提供してくれています。