第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによるイギリス本土侵攻計画「アシカ作戦(Unternehmen Seelöwe)」において、航空機は計画の成否を左右する最重要要素とされていました。ここでは、航空機が不可欠とされた5つの理由を詳しく解説します。
1. 制空権の確保
上陸作戦を成功させるためには、まず制空権の獲得が何よりも優先されました。ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)は、イギリス海峡およびイギリス本土上空の制圧を目指し、王立空軍(RAF)が侵攻艦隊への妨害行為やイギリス地上部隊への支援を行うことを阻止しようとしたのです。空からの脅威を取り除かなければ、大規模な渡海作戦そのものが成立しませんでした。
2. 近接航空支援
侵攻作戦の遂行中、航空機はドイツ地上部隊への近接航空支援において決定的な役割を果たすはずでした。ルフトヴァッフェの爆撃機や戦闘爆撃機は、イギリス軍の防衛陣地、砲兵陣地、兵力集結地を攻撃し、進撃するドイツ軍の道を切り開くことが想定されていました。
3. 戦略爆撃
ルフトヴァッフェによる戦略爆撃は、イギリスのインフラを弱体化させ、通信網を麻痺させ、さらに民間人の士気を低下させることを目的としていました。攻撃対象としては、工場、飛行場、港湾施設、そして主要都市が挙げられていました。
4. 海軍の支援
航空機はドイツ海軍を支援する役割も担っていました。具体的には、イギリス海軍の艦船への攻撃、偵察活動、対艦作戦などです。ドイツの爆撃機や雷撃機は、イギリスの軍艦を撃破または損傷させ、海上防衛網に打撃を与えることを狙っていました。制海権の脆弱なドイツにとって、航空戦力による海上封鎖は特に重要でした。
5. 空挺部隊とグライダーの輸送
ルフトヴァッフェは、本格的な侵攻に先立ち、ドイツ空挺部隊およびグライダー部隊を重要な戦略拠点へ輸送する任務も負っていました。これらの空挺部隊は、飛行場、橋梁、通信中枢といった要所を奇襲によって確保し、主力部隊の上陸を円滑に進めることが求められていたのです。
作戦中止への道
これらの航空作戦の成功は、ヒトラーのイギリス侵攻計画の根幹をなすものでした。しかしながら、「バトル・オブ・ブリテン(英独航空戦)」における王立空軍の粘り強い防御に加え、補給面での課題や資源の制約が重なり、1940年9月、アシカ作戦はついに中止されることとなりました。この結果、ナチス・ドイツのイギリス本土上陸の夢は、実現することなく終わったのです。