フィリス・ウィートリー(Phillis Wheatley、1753年頃~1784年)は、アメリカ史上初めて詩集を出版したアフリカ系アメリカ人女性詩人です。彼女の幼少期については確かな記録がほとんど残されていませんが、西アフリカで生まれ、幼い頃に奴隷として売られたと考えられています。1761年にはボストンのウィートリー家に引き取られ、そこで驚異的な速さで読み書きを習得しました。ウィートリー夫妻の温かい励ましを受けて詩作を始め、やがて才能ある詩人として広く認められるようになりました。
奴隷としての経験が「中間航路」の詩に与えた影響
アフリカから奴隷として連れてこられたという彼女自身の背景は、「中間航路(ミドル・パッセージ)」――大西洋を渡って奴隷とされたアフリカ人たちを強制的に運んだ過酷な航海――についての詩に深い影響を与えました。代表作「アフリカからアメリカへ連れて来られて(On Being Brought from Africa to America)」では、中間航路の悲惨さと、同胞であるアフリカの人々の苦しみが描かれています。彼女はこう綴っています。
「慈悲が私を異教の地から連れてきて、
闇に閉ざされたこの魂に悟らせたのです。
神がおわすこと、救い主もまた存在することを。
かつて私は贖いを求めもせず、知りもしなかったことを。」
ウィートリーの詩は、奴隷貿易に対する痛烈な告発であると同時に、人間の精神の強靭さを証明するものでもあります。彼女は著作活動を通じて、声を奪われた人々に代わって声を上げ、奴隷制の非人道性に対する社会全体の意識を高めることに大きく貢献しました。1773年には『諸主題に関する宗教的・道徳的詩集』をロンドンで出版し、その名を文学史に刻んでいます。