水をたたえた巨大な長方形の建造物——一見すると単なる貯水池のように見えますが、実はこれは古代の船だまり(ドック)、しかも世界最古級の港湾施設の一つなのです。その所在地は、インド・グジャラート州アーメダバードの南約85キロメートルにある古代都市ロータールの遺跡。ロータールは、インド国内からアクセスできる数少ないインダス文明の遺跡として知られています。
インダス文明唯一の港町
ロータールは少なくとも5000年前にさかのぼる歴史を持ち、インダス文明において唯一の港町だったと考えられています。ロータールのドックは街をサバルマティ川へとつなぎ、この川はシンド地方(現在のパキスタン)のハラッパー諸都市とサウラーシュトラ半島を結ぶ重要な交易路でした。当時、現在のカッチ砂漠一帯はアラビア海の一部だったのです。

この波止場は全長約200メートル、幅約35メートルにおよびます。満潮時には海水がドック内に流れ込み、船や舟を船渠から自由に出し入れできる仕組みになっていました。
潮の満ち引きを利用した巧妙な設計
実は、ロータールはドックの建設地として理想的な場所でした。近くのカンベイ湾は世界有数の干満差を誇り、強い潮流に乗せて船を河口へと進入させることができたのです。
さらに、ドックの排水口には木製の水門が設けられていました。これを下ろすことで、干潮時でもドック内に最低限の水深を保ち、船の浮力を確保できるようにしていたのです。

倉庫と優れた都市計画
街の経済の中核を担っていたのは倉庫です。倉庫は洪水による被害から商品を守るため、高く盛り上げられた基壇の上に建てられ、ドックから倉庫へは荷役作業の便を図って直接スロープが通じていました。しかし、こうした綿密な対策を講じながらも、最終的に街を滅ぼしたのは他ならぬ洪水だったといいます。
他の多くのハラッパー系都市と同様、ロータールも見事な都市計画を備えていました。城壁で囲まれた四角形の街区には東西・南北に走る広い通りが交差し、漆喰で仕上げられた舗装路、高度な排水システム、浴室用の平台が整然と並び、さらにはビーズ工房まであったことが分かっています。
「貯水池説」と決定的な証拠
1955年に遺跡の発掘が始まった当初、一部の考古学者たちは「この水槽は船を係留するには小さすぎる」「実際は灌漑用の貯水池ではないか」と主張していました。

ところが、その後の調査で海洋性の微化石や塩分、石膏の結晶が発見され、この構造物にかつて海水が張られていたことを示す決定的な証拠となりました。ただし今日では、川筋の変遷により、遺跡はもはや湾と水路でつながっていません。
繁栄の果てに
ロータールは、インダス文明の主要都市であるモヘンジョダロやハラッパーが放棄された後も長く存続しました。しかし、度重なる嵐と頻発する洪水が街に甚大な被害をもたらし、ついには人が住めない土地となり、放棄されるに至ったのです。
本記事はAmusing Planet掲載記事の翻訳です(許可を得て翻訳)。