ワット・プラ・ユエンとは
ワット・プラ・ユエン(Wat Phra Yuen)は、タイ北部チェンライ県チエンセーンの市街中心部に位置する古代寺院遺跡です。かつて発掘調査と修復、周辺の景観整備が実施され、現在はファーホンヨーティン通り(国道1016号線)沿いの南側、住宅地に囲まれた静かな環境の中にあります。近くにはワット・プラブアット、ワット・ムンムアン、ワット・プラチャオトンノイといった由緒ある寺院も点在しています。
立地と自然環境
標高
海抜384メートル。
水系
メコン川。
地質条件
チエンセーンはメコン川の西岸に位置し、第四紀に運ばれた砂や砂利などの堆積物によって形成された広大な「チエンセーン平野」の上に広がっています。
遺跡の基本情報
考古学的時代:歴史時代
文化圏:ランナー文化
考古学的年代:仏暦21世紀半ば頃(西暦15世紀後半~16世紀前半)
伝承上の年代:仏暦1875年(西暦1332年)
遺跡の種類:宗教関連遺跡
伝承に残る創建の歴史
伝説によれば、ワット・プラ・ユエンは仏暦1875年(西暦1332年)、チエンセーンの領主パヤー・カムフーの治世に、140の仏舎利を納めるために建立されたとされています。その後、仏塔が損傷したため、チエンマイの領主パヤー・ルアン・チャイウィチットによって改めて修復が行われたと伝えられています。
また、年代記には、仏暦1718年に水位が約3ソク(約1.5メートル)に達する大洪水がチエンセーンを襲い、ワット・アティット・トンカーオ、ワット・プラブアット、ワット・ムンムアン、そしてワット・プラ・ユエンの各寺院が深刻な被害を受けたことが記録されています。
発掘調査と仏塔の様式
タイ芸術省は1957年からワット・プラ・ユエンにおいて考古学的発掘調査を行ってきました。調査の結果明らかになったのは、この仏塔がチエンセーンのワット・センムアンマーの仏塔と極めてよく似た様式を持つという点です。具体的には、八角形の基壇の上に鐘型の仏塔が立ち、角を段状に面取る「ヨームー・マイシップソーン(十二折れ角)」の意匠が施され、一辺7.5メートルの方形基壇が三層に積み重なる構造となっています。
一方で、礼拝堂(ウィハーン)をはじめとする附属建築物の遺構は確認されていません。ただし、仏塔の南側の地表からは、煉瓦とモルタルで造られた仏像の破片が出土しており、かつて堂宇や仏像が存在した可能性をうかがわせます。
建立年代の推定
仏塔の様式的特徴から、ワット・プラ・ユエンの仏塔は仏暦21世紀半ば頃に建立されたものと推定されています。なお、年代記の中に仏暦19世紀の建立を直接示す記録は見られず、仏暦2138年(西暦1595年)に行われた修復工事は、おそらく創建当時の様式を踏襲して施されたものと考えられています。