ワット・プラブアトとは
ワット・プラブアト(Wat Phra Buat)は、タイ北部・チエンセーンの旧市街中心部に位置する古代寺院遺跡です。発掘調査と修復、景観整備が行われたのち、現在は遺跡として一般公開されています。ファホンヨーティン通り(国道1016号線)沿いの南側にあり、周囲は住宅や商店が立ち並ぶ市街地。道路を挟んだ向かい側にはワット・ムン・ムアンが建っています。
立地と自然環境
標高と水系
標高は海抜約379メートル。付近の主要な水系はメコン川です。
地質条件
チエンセーンはメコン川の西岸に位置し、第四紀に堆積した砂や砂利などから形成された広大な「チエンセーン平野」の上にあります。
歴史と年代
この遺跡は歴史時代に属し、ラーンナー期の宗教施設(寺院)でした。建立は仏暦1889年(西暦1346年頃)と伝えられ、仏紀20〜21世紀(おおよそ14世紀後半〜16世紀)にかけての遺構と考えられています。
『チエンセーン年代記』第61章には、ワット・プラブアトがクーナー王(Phaya Kue Na)によって建立された旨の記録があります。そこには「ファーユー王は仮暦708年、メンカイ暦6月満月の日、ウィアン・チャイブリー(チエンセーン)に入り、その日に功徳を積み供養を行った」といった記述が見られます。
また『ヨーノック年代記』には、「1717年頃、チエンセーンに大洪水が起こり、ワット・プラブアトはこれによって倒壊した」と記されており、水害との関わりもうかがわせます。
境内の主要建造物
仏堂(ウィハーン)
幅13メートル×奥行20メートル、東向きの仏堂です。堂内には台座の上に漆喰製の仏像が安置されています。
仏塔(チェーディー)
仏堂の北側に位置する煉瓦積みの仏塔です。基壇は三段の方形基壇からなり、最下段は一辺8メートル。その上に、ラーンナー様式特有の盛り上げ式の二重蓮弁基壇が重ねられます。さらに鐘部を受けるための三重の蓮弁座が設けられ、各段ごとに「鶏胸飾り」と呼ばれる装飾が2個ずつ施されています。その上に小型の円形鐘部が続き、方形の台座に十二隅の意匠を加え、階段状の竿部、そして先端を覆う蓮蕾形の頂部へと至ります(現在、頂部は失われています)。
修復で明らかになった「内側の仏塔」
タイ芸術局による修復工事の過程で、この仏塔の内部にもう一基の仏塔が納められていたことが判明しました。内側の仏塔は「城郭型」と呼ばれる形式で、祠堂部の位置がかなり低く、低い基壇の上に載っています。四方すべてに仏像を安置するアーチ型の龕(がん)が設けられ、龕内からは漆喰製の仏像が発見されました。そのうちの一つは立像で、漆喰ならではの柔らかな造形が特徴です。
現在、外側の仏塔の一部が開口され、内側の仏塔の漆喰仏像を目にすることができるようになっています。
建築年代の推定
建築様式と彫刻表現の両面から、内側の仏塔は仏紀20世紀(おおよそ14世紀後半〜15世紀中頃)、外側の仏塔は仏紀20世紀末〜21世紀初頭(おおよそ15世紀後半〜16世紀前半)に造られたと推定されています。古い塔を包み込むように新しい塔が築かれた珍しい事例として、ラーンナー建築史において重要な遺跡です。
観光のポイント
ワット・プラブアトはチエンセーン旧市街の中心部にあり、ワット・パーサックやワット・チェディ・ルアンといった他の遺跡寺院とあわせて徒歩で巡ることができます。修復によって姿を現した内側の仏塔を見学できる点が大きな魅力で、ラーンナー美術に関心のある旅行者におすすめのスポットです。