
スペインの「赤の貴婦人」の墓から発見された化石花粉
故人に花を手向ける「献花」の習慣は、私たちが想像していたよりもはるかに古くから存在していました。あるいは、人類そのものの歴史と同じくらい昔から続いていたのかもしれません。
それを如実に示すのが、スペイン北部カンタブリア地方にあるエル・ミロン洞窟(El Mirón)での最近の発見です。研究者たちは、この洞窟内の旧石器時代の墓から、花の花粉の化石を確認しました。
「赤の貴婦人」の墓から見つかった花粉
この墓に眠っていたのは、「赤の貴婦人(Red Lady)」と呼ばれる女性です。彼女の遺骨は赤色顔料のオーカーによって染められており、この特徴的な埋葬方法から、共同体においてきわめて重要な地位を持つ人物だったと考えられています。
発見された花粉の多くは、アカザ科に属する自生の一般的な草本の花によるものでした。これらの花は約1万6000年前に捧げられたものであり、その最も妥当な解釈は、亡くなった女性を悼み、敬意を表するために置かれたというものです。
この花粉の痕跡は、現在までに知られている限り世界最古の献花の事例となります。
数万年の時を超えて受け継がれた弔いの心
今回の発見は、花を添えて死者を弔う行為が近代や有史以降に始まったものではなく、旧石器時代の狩猟採集民のあいだにもすでに存在していたことを示しています。死者を敬い、その死を悲しむ心は、1万6000年もの時を超えて、現代の私たちへと受け継がれているのです。