イエス・キリストの遺体を包んだ布とされる「トリノの聖骸布」。しかし、この布がどのようにして発見されたのかを示す歴史的な証拠は、実は一切存在していません。
「発見」を裏付ける記録は存在しない
聖骸布の起源については数多くの伝承や仮説が語られてきましたが、それ以前の時代にこの布がどこで、誰によって見つけられたのかを裏付ける確かな史料は確認されていません。言い換えれば、「発見された年」というものは歴史上定義できないのです。
歴史記録に初めて登場したのは1354年
聖骸布が歴史の表舞台に姿を現すのは、1354年のことです。この年、聖骸布はヨーロッパ有数の名門であるサヴォイア家(ハウス・オブ・サヴォイ)の所有となりました。以降、同家は聖骸布を代々大切に守り続けました。
現在もトリノで厳重に保管される聖骸布
1578年には、サヴォイア家ゆかりの地であるイタリア・トリノへ移され、現在でもトリノ大聖堂(洗礼者聖ヨハネ大聖堂)内に厳重に保管されています。1988年に行われた放射性炭素年代測定では、この布が中世のもの(1260年〜1390年頃)とする結果が発表され、その真贋をめぐる議論は今日まで続いています。
つまり、トリノの聖骸布は「発見された」というよりも、14世紀半ばに突如として歴史記録に現れた存在だと言えるでしょう。