古代エジプトにおいて、使用人を王や女王と一緒に埋葬することは、実は一般的な慣習ではありませんでした。一見すると、権力者が死後も快適に過ごせるよう召使いたちを殉葬させたのではないかと想像しがちですが、エジプトの埋葬文化はむしろ異なる方向へ発展していきました。
ファラオの墓を飾ったのは「財宝」だった
ファラオの墓には、死後の世界で必要とされる品々が数多く納められていました。宝石や金銀細工、豪華な家具、さらには来世での食事として食べ物までもが副葬品として安置されていました。ツタンカーメン王の墓から発見された膨大な遺物は、その典型例としてよく知られています。
人間の殉葬は例外的な存在
ただし、歴史の初期には例外的な事例も確認されています。第1王朝頃の一部の王墓では、従者たちが主人とともに埋葬された形跡が見られます。しかし、この習慣はごく短期間で廃れ、その後のエジプト史において人間の犠牲や殉葬が埋葬慣習の一部となることはありませんでした。
シャブティ像という賢い代替案
代わりにエジプト人が考案したのが、シャブティ(ウシャブティ)と呼ばれる小さな像です。これは来世で死者に仕え、農作業などの労働を代わりに行ってくれる「使用人の代役」として墓に納められるものでした。人命を犠牲にすることなく、永遠の奉仕を約束するこの発想は、古代エジプトの宗教観と実用性が融合した巧みな解決策といえるでしょう。