ムガール帝国最後の皇帝は、バハードゥル・シャー・ザファル(Bahadur Shah Zafar、バハードゥル・シャー2世としても知られる)です。彼はムガール朝第17代にして最後の皇帝であり、1837年に即位してから1862年に亡くなるまで帝位に就いていました。
即位と時代背景
1775年に生まれたザファルは、父アクバル2世の後を継いで1837年に皇帝となりました。しかしこの時期、ムガール帝国はすでに名目上の存在にすぎず、実権はインドを支配するイギリス東インド会社の手にあり、皇帝の影響力はデリー周辺に限定されていました。
1857年のインド大反乱
転機となったのは1857年です。インド史上「第一次独立戦争」あるいは「セポイの乱」と呼ばれるインド大反乱が勃発すると、反乱軍の兵士たちは精神的な象徴としてザファルを指導者に推戴しました。しかし反乱は翌1858年にイギリス軍によって鎮圧され、皇帝もその責任を問われることになりました。
ラングーンへの流刑と死
鎮圧後、ザファルはビルマ(現在のミャンマー)のラングーン(現ヤンゴン)へ追放されました。そして1862年11月、87歳でこの地にてその生涯を閉じました。これをもって、1526年以来約330年続いたムガール帝国は正式に滅亡しました。
詩人としての遺産
皇帝としては悲運な末路を遂げたザファルですが、もう一つの顔はウルドゥー語詩の名匠です。「ザファル」という号を用いた彼は、多くのガザル(抒情詩)を残しており、その作品は今日でも南アジアで愛読されています。特に流刑地での晩年の詩は、失われた祖国への哀愁を歌ったものとして名高い存在です。
まとめ
バハードゥル・シャー・ザファルは、輝かしいムガール文明の歴史に幕を下ろした最後の皇帝です。実権なきまま即位し、反乱の象徴として異郷の地で果てた彼の人生は、植民地化が進む19世紀インドという激動の時代を象徴する物語といえるでしょう。