ジョージ・E・ベケット・ジュニア(George E. Beckett, Jr.)は、1930年8月12日、ニュージャージー州ウェストオレンジに生まれました。地元のウェストオレンジ高校を卒業した後、コルゲート大学に進学して歴史学を専攻します。1952年の大学卒業後は米国陸軍に2年間勤務し、その故郷ウェストオレンジへ戻って、IBMの研究部門であるトーマス・J・ワトソン研究所でのキャリアをスタートさせました。
IBMでの輝かしいキャリア
ベケットはワトソン研究所で30年以上にわたって勤務し、最終的に研究担当副社長(Vice President of Research)の要職まで昇りつめました。その職責において、コンピュータサイエンス、人工知能(AI)、超電導といった幅広い分野の研究プロジェクトの統括を担当しています。
特に注目すべきは、史上最も成功したメインフレームの一つとされる「IBM System/360」の開発において、彼が重要な役割を果たしたことです。System/360はコンピュータ産業の発展における転換点となった製品であり、ベケットの功績は現代のコンピューティングの基盤にも深く結びついています。
学界での第二の人生
1992年、ベケットはIBMを退職した後、ラトガース大学の教授に就任しました。同大学ではコンピュータの歴史に関する講義を担当するとともに、ラトガース・コンピューティング歴史センターの所長も務めました。
また、執筆活動にも力を注ぎ、『メインフレームコンピュータの歴史(The History of Mainframe Computers)』や『パーソナルコンピュータの歴史(A History of the Personal Computer)』をはじめとする、コンピュータ史に関する著作を複数発表しています。
受賞歴と栄誉
ベケットは米国科学振興協会(AAAS)のフェローに選出され、全米工学アカデミー(NAE)の会員にも名を連ねました。その革新的な業績に対して、IEEEコンピュータソサエティの「コンピュータパイオニア賞」や、計算機科学分野で最高峰とされるACMの「A.M.チューリング賞」を含む、数多くの栄誉が贈られています。
主な受賞歴一覧
- 1978年:コンピュータパイオニア賞(Computer Pioneer Award)
- 1980年:ACMフェロー
- 1986年:A.M.チューリング賞(A.M. Turing Award)
- 1987年:IBMフェロー
- 1994年:IEEEジョン・フォン・ノイマンメダル
- 1996年:米国国家科学賞(National Medal of Science)
- 1998年:ニュージャージー名誉の殿堂(New Jersey Hall of Fame)
- 2001年:チャールズ・バベッジ研究所フェロー(Charles Babbage Institute Fellow)
晩年
ジョージ・E・ベケット・ジュニアは、2019年9月23日、ニュージャージー州モリスタウンにて89歳でこの世を去りました。産業界と学界の双方でコンピュータの発展に多大な貢献を果たしたその足跡は、今日でも高く評価され続けています。