ウォルサム・ローウェル・システムとは
アメリカの実業家フランシス・カボット・ローウェル(Francis Cabot Lowell)が導入したのが、歴史に名を残す「ウォルサム・ローウェル・システム(Waltham-Lowell System)」です。これは、紡績から織布までのすべての工程をひとつの工場内に集約し、水力を動力とした機械と徹底した分業体制によって大量生産を実現するという、当時としては極めて革新的な生産方式でした。
イギリスで先進的な織物技術を詳細に研究して帰国したローウェルは、1813年にマサチューセッツ州ウォルサムでボストン製造会社(Boston Manufacturing Company)を設立します。その後、同じ州に建設された計画都市ローウェルでは、このシステムがさらに大規模に展開され、アメリカ産業革命の象徴となりました。
雇われたのは農村出身の若い女性たち
このシステムのもとで雇用されたのは、主にニューイングランド地方の農村から出てきた若く未熟練の未婚女性たちでした。彼女たちは「ミル・ガールズ(工場娘)」と呼ばれ、寮付きの住居、定期的な現金による賃金、厳格だが安定した労働環境といった条件に魅力を感じて、田舎から工場へと働きに出てきました。
生産チームの一員として複数の機械を操作
特筆すべきはその働き方です。ミル・ガールズは一人きりで単一の作業に従事するのではなく、生産チームの一員として複数の機械を受け持ち、協力しながら生産を進めるという形態を採っていました。このチーム型の分業労働により、工場は高い生産性を維持することができました。
アメリカ工業化の先駆けとなった仕組み
ウォルサム・ローウェル・システムは、それまで主流だった家庭内請負労働(問屋制)から、機械を集中させた工場制生産への移行を決定づけました。若い女性たちが大規模な工場労働の担い手となったこの制度は、アメリカにおける近代的労働文化の出発点として、後の産業社会にも深い影響を残しています。