世界保健機関(WHO)は、国連の専門機関の一つであり、世界中の公衆衛生の向上を使命としています。すべての人が、住む場所にかかわらず質の高い医療へ平等にアクセスできることを目指している点が特徴です。ここでは、WHOの誕生から現在までの歴史をわかりやすく解説します。
WHOの起源
世界的な保健機構という構想は、19世紀にさかのぼります。当時、世界はコレラやペストなどの深刻な感染症の流行に何度も見舞われており、検疫や疾病管理について話し合うため、複数回の国際衛生会議が開催されました。これらの会議が、後の国際的な保健協力の基盤となりました。
WHOの設立
WHOは、1946年に開催された国際保健会議での合意をもとに、1948年4月7日に正式に発足しました。本部はスイスのジュネーブに置かれています。設立の目的は、各国の保健活動を調整し、世界の公衆衛生の向上を推進することでした。なお、この発足日にちなんで、4月7日は「世界保健デー」と定められています。
初期の大きな成果
- 天然痘の根絶: WHOは天然痘撲滅運動で決定的な役割を果たしました。1967年に「天然痘根絶強化計画」を開始し、大規模な予防接種キャンペーンを展開した結果、1980年には世界から天然痘を根絶することに成功しました。人類史上初めて感染症が完全に根絶された、歴史的な快挙です。
- マラリア対策: 1950年代にはマラリア根絶計画を立ち上げるなど、熱帯病との闘いにも力を注ぎました。
一次医療(プライマリーヘルスケア)への重点
1970年代には、「すべての人に健康を」という理念のもと、プライマリーヘルスケアの概念を採用しました。これは、医療が行き届いていない地域社会に対して、住民に密着した形で基本的な医療サービスを提供することを重視する考え方です。1978年のアルマ・アタ宣言により、この方針が国際的に確認されました。
HIV/AIDSとその他の感染症への対応
- 1980年代には、HIV/エイズの流行について世界に危機感を広め、予防や治療のための資金・体制づくりを主導しました。
- 2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の発生時には、各国と連携して情報共有や封じ込め対策を主導するなど、新興感染症への対応の最前線に立ってきました。
- 近年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいても、各国への助言やワクチンの公平な供給の促進などに取り組みました。
ミレニアム開発目標(MDGs)への貢献
2000年、国連は8つの目標からなる「ミレニアム開発目標(MDGs)」を採択しました。その中には保健関連の目標が含まれており、WHOは乳幼児死亡率の削減や、HIV感染者への抗レトロウイルス治療(ART)アクセスの拡大など、複数の目標達成に貢献しました。
持続可能な開発目標(SDGs)との連携
2015年には国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択し、ここにも保健に関する目標(目標3:あらゆる人々の健康と福祉を確保)が盛り込まれました。WHOは各国政府やパートナー団体と協力しながら、保健格差の根本原因に取り組み、世界の健康水準の向上を目指す活動を続けています。
批判と課題
- 資金面の課題: WHOの財源の多くは加盟国からの任意拠出金に依存しており、一部の先進国や民間財団の意向が活動に影響を与えやすいという批判があります。
- 緊急事態対応への疑問: 新型コロナウイルスのパンデミック初期の対応などをめぐっては、対応の遅れが問題視され、組織改革を求める声が高まりました。
まとめ
こうした批判や課題を抱えながらも、WHOは今日まで世界の公衆衛生の向上において不可欠な役割を担い続けています。感染症対策から保健格差の是正まで、その活動は世界中の何百万人もの人々の健康と福祉の向上につながってきました。