結論から言えば、イギリスでは首相が戦争を宣言する際に、国王の許可を求める必要はありません。一見すると国家の重大な決定のように思えますが、英国の憲政の仕組みの中では、最終的な決定権は首相の手にあります。
「王室大権」とは何か
この仕組みを理解する鍵となるのが、「王室大権(ロイヤル・プレロガティブ)」と呼ばれる制度です。王室大権とは、君主に属する権限および特権の総体を指し、その多くは首相が君主の名において行使します。
王室大権には、宣戦布告や講和の権限のほか、閣僚の任命、議会の解散、旅券の発給など、国家運営に関する重要な権限が含まれます。つまり、戦争を宣言する権限自体は形式上「君主のもの」ですが、実際にこれを動かすのは首相なのです。
実際の運用:協議はあるが、決定は首相にある
とはいえ、現実には首相がこうした重大な決定を君主との協議なしに単独で下すことは通常ありません。開戦のような国家的な岐路においては、君主と意見を交わすことが慣例となっています。
しかし、英国の憲法上の慣行として、君主は首相の助言に従うことが求められます。君主が政治的な判断を独自に行うことはなく、政府の助言を受け入れるのが原則です。したがって、宣戦布告という最終決定を下すのは、あくまで首相であるといえます。
まとめ
英国の首相は、戦争を宣言するために国王に「お願い」をする必要はありません。王室大権は君主に属するものの、その行使は首相の責任のもとで行われ、君主は憲法上の慣行に従って首相の助言を受け入れる仕組みになっています。象徴としての君主と、実務上の決定権を持つ首相という役割分担が、英国の立憲君主制を支えているのです。