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マカロック対メリーランド州事件とは?連邦権限を拡大した米国史上の重要判決を解説

マカロック対メリーランド州事件とは

マカロック対メリーランド州(McCulloch v. Maryland、1819年)は、アメリカ合衆国最高裁判所が下した画期的な判決の一つです。この判決により「暗黙の権限(インプライド・パワーズ)」の法理が確立され、連邦政府の権限が大きく拡大される一方、州の権限は制限されることになりました。

事件の背景

  • 1816年、連邦議会は第二合衆国銀行を設立し、メリーランド州を含む各州に支店を開設しました。
  • これに対してメリーランド州は、州内で営業するすべての銀行(第二合衆国銀行を含む)に対し、州の認可の取得と税金の納付を義務付ける法律を制定しました。
  • 第二合衆国銀行ボルチモア支店の出納係(キャッシャー)であるジェームズ・W・マカロックはこの税の支払いを拒否し、「連邦政府には銀行を設立する権限があり、メリーランド州の法律は違憲である」と主張しました。

法的争点

この事件の核心となる争点は、以下の2点でした。

  • 憲法に明文の規定がなくても、連邦政府は国立銀行を設立できるのか。
  • 州は、連邦政府によって認可された機関に対して課税することが許されるのか。

憲法上の根拠

合衆国憲法第1条第8節は、議会に対して「租税を賦課・徴収する権限」「合衆国の信用による借入の権限」などを列挙的に与えるとともに、これらの権限を執行するために「必要かつ適切な」すべての法律を制定する権限(必要適切条項)を認めています。

両者の主張

メリーランド州の主張

メリーランド州側は、憲法は連邦政府に銀行設立の権限を明示的に与えておらず、銀行を認可する権限は各州に属すると主張しました。また、第二合衆国銀行の活動は州の主権と衝突するものであるとも述べました。

連邦政府の主張

一方、連邦政府側は、憲法は広く柔軟に解釈されるべきであり、銀行を設立する権限は、連邦政府に付与された列挙された権限から暗黙裏に導かれるものであると主張しました。

最高裁判所の判決

最高裁判所は、ジョン・マーシャル首席判事による全会一致の意見として、連邦政府側の勝訴を宣告しました。マーシャル首席判事は憲法の広範な解釈を採用し、「必要かつ適切な」条項(第1条第8節)に基づいて、連邦政府には国立銀行を設立する暗黙の権限があると結論付けました。さらに、銀行は租税の徴収、通商の規制、資金の借入れといった憲法上明示された権限を効果的に遂行するための、便利で有用な手段であると論じました。

影響と意義

  • 暗黙の権限論の確立: 憲法に明記されていない権限であっても、列挙された権限を効果的に執行するために必要であれば連邦政府が行使できるという原則が確認されました。
  • 連邦優位の強化: 州が連邦の制度や活動に制約を課すことは許されず、連邦政府の州規制に対する優越性が強化されました。
  • 後世への先例: 連邦政府の権限の範囲や連邦と州の関係をめぐる、その後の数多くの裁判における重要な先例となりました。

マカロック対メリーランド州事件は、アメリカの連邦制における連邦と州の権力バランスを決定づけた、憲法史上最も重要な判決の一つとして位置づけられています。