ベトナム戦争は「ヘリコプター戦争」とも呼ばれ、回転翼航空機が本格的に大量投入された史上初の大規模紛争でした。密林や山岳地帯という困難な地形の中で、ヘリコプターは兵員輸送から攻撃支援、負傷者の救出まで、あらゆる場面で決定的な役割を果たしました。
ここでは、ベトナム戦争で実際に使用された代表的なヘリコプターの種類と、それぞれの特徴・任務内容を詳しく解説します。
UH-1 イロクォイ(ヒューイ)
通称「ヒューイ」として知られるUH-1 イロクォイは、ベトナム戦争において最も多く使用されたヘリコプターです。極めて汎用性の高い機体であり、兵員輸送、貨物輸送、負傷者の医療搬送(メディバック)、さらには武装してガンシップとして地上部隊を支援するなど、多彩な任務をこなしました。
単発のターボシャフトエンジンを搭載し、最大14名の兵員、または約2,700kg(6,000ポンド)の貨物を運搬できました。その信頼性と機動性から、ベトナム戦争の象徴的存在となっています。
CH-47 チヌーク
CH-47 チヌークは、前後二枚のローターを持つ大型輸送ヘリコプターです。重量物の運搬を得意とし、兵員、貨物、さらに榴弾砲などの重火器の輸送に幅広く活用されました。医療搬送や捜索救難任務にも従事しています。
双発のターボシャフトエンジンを搭載し、最大33名の兵員、または約10,900kg(24,000ポンド)もの貨物を輸送可能。現在でも改良型が各国で現役運用されている、名機中の名機です。
AH-1 コブラ
AH-1 コブラは、世界初の実用攻撃ヘリコプターとして開発された、攻撃に特化した機体です。細身の機体形状により被弾面積を抑えつつ、ロケット弾、ミサイル、20mm機関砲など多彩な武装を備え、地上部隊への近接航空支援(CAS)を担いました。
単発のターボシャフトエンジンを搭載し、最高速度は約320km/h(時速200マイル)に達します。敵陣地への攻撃や護衛任務で大きな戦果を挙げました。
CH-46 シーナイト
CH-46 シーナイトは、アメリカ海軍および海兵隊で運用された中量級輸送ヘリコプターです。艦船との間での兵員・貨物の移送を主な任務とし、医療物資の輸送にも使用されました。
CH-47と同様にタンデムローター方式を採用し、双発のターボシャフトエンジンで駆動。最大17名の兵員、または約1,800kg(4,000ポンド)の貨物を運搬できました。
UH-1B/C/D/H スリック
「スリック(Slick)」とは、武装を施さないヒューイ(UH-1)系列の派生型を指す呼称です。兵員輸送と貨物搬送に特化しており、戦闘地域への部隊展開や補給活動で活躍しました。
単発のターボシャフトエンジンを搭載し、最大14名の兵員、または約2,700kg(6,000ポンド)の貨物を輸送できます。武装したガンシップ型とペアを組み、作戦行動するのが典型的な運用方法でした。
UH-1H メディバック(Medevac)
メディバック仕様のUH-1Hは、医療搬送(傷病者後送)に特化したヒューイの派生型です。機内には最大6名の患者を収容できる担架システムが装備され、戦場から迅速に負傷者を野戦病院へ搬送しました。
この「負傷者をいち早く手術へ届ける」体制は、ベトナム戦争における生存率向上に大きく貢献し、今日の戦闘捜索救難(CSAR)やドクターヘリの原型とも言われています。
AH-1G コブラTOW
コブラTOWは、AH-1 コブラに対戦車ミサイル「TOW」を搭載した強化派生型です。従来の近接航空支援に加えて、敵装甲車両や戦車の破壊を主目的としました。
ワイヤー誘導式のTOWミサイルにより、遠距離から正確に対装甲攻撃を行えるようになり、対地攻撃能力が大幅に向上しました。単発エンジン搭載で最高速度は約320km/h(時速200マイル)を維持しています。
まとめ
ベトナム戦争では、万能輸送機のヒューイ、重輸送のチヌーク、攻撃特化のコブラ、海兵隊のシーナイトなど、任務ごとに異なる特性を持つ多彩なヘリコプターが投入されました。これらの機体が示したヘリコプターの軍事的価値は、その後の世界各国の軍事航空のあり方を大きく変えることとなりました。