はじめに
1918年に世界中を襲ったインフルエンザの大流行、いわゆる「スペインかぜ」は、第一次世界大戦の終結にどのような役割を果たしたのでしょうか。結論から述べると、歴史学における主流の見解では、このパンデミックは戦争終結の決定的な要因とはみなされていません。
ただし、「大流行は休戦協定の後になって初めて出現した」という説明には誤りがあります。実際には、スペインかぜは戦争中の1918年春にすでに出現し、前線の兵士たちの間で急速に広がっていました。
スペインかぜは戦争中にすでに流行していた
第一波は1918年春、アメリカやフランスの軍隊内で発生し、兵士の移動とともに各国へと伝播しました。同年秋には致死率の高い第二波が襲来し、交戦国双方の兵士と民間人に甚大な被害をもたらします。ドイツと連合国との間で休戦協定が調印されたのは1918年11月11日ですが、その時点でもパンデミックは依然として進行中でした。
戦争を終わらせた本当の要因
第一次世界大戦の終結は、主として以下のような軍事的・政治的要因によってもたらされたと考えられています。
- 1918年のドイツ軍春季攻勢の失敗と戦力の大幅な消耗
- 連合国による海上封鎖が引き起こしたドイツ国内の食料・物資不足
- アメリカ軍の本格参戦により、大量の兵力と物資が西側戦線に到着
- ドイツ国内での革命運動の勃発と皇帝ヴィルヘルム2世の退位
パンデミックの間接的な影響
とはいえ、スペインかぜが戦局にまったく影響を与えなかったわけではありません。ドイツ軍の攻勢の時期に前線で大量の兵士が罹患して戦力低下が生じたこと、アメリカのウィルソン大統領がパリ講和会議の最中に感染し、交渉への影響が指摘されていることなど、間接的な効果を挙げる研究者もいます。
しかし、これらは戦争の帰趨を左右する決定的要因ではなく、あくまで副次的なものと評価されています。
まとめ
スペインかぜは第一次世界大戦と同時期に猛威を振るい、世界中で数千万人規模の犠牲を出しましたが、戦争を終わらせた直接の原因ではありません。終戦をもたらしたのは、軍事的敗北、経済的疲弊、政治的崩壊といった複合的な要因であり、パンデミックはその背景の一つにとどまる——これが現在の歴史学界における一般的な見解です。