軍事理論の古典『戦争論』で知られるカール・フォン・クラウゼヴィッツ。しかし意外なことに、彼の理論体系において騎兵は中心的なテーマではありませんでした。
クラウゼヴィッツの騎兵観:あくまで補助的な兵科
クラウゼヴィッツは著作の中で騎兵に言及こそしているものの、それを戦場を決定づける「突破の主役」として描くことはありませんでした。彼が騎兵に期待したのは、あくまで伝統的かつ補助的な役割です。
騎兵に担わせた3つの伝統的役割
- 追撃(パーシュート):敵が敗走した後、これを追撃して撃滅を徹底する
- 偵察:敵情の収集と地形の把握
- 掩護(スクリーニング):自軍の側面や背後を守り、敵の偵察を妨害する
背景にあるのは「歩兵中心」の軍事思想
この限定的な評価には、時代の変化が関係しています。火器の発達により、突撃力を武器とする騎兵の相対的な価値は低下しつつありました。クラウゼヴィッツは、戦闘の基幹となるのはあくまで歩兵であり、砲兵と騎兵はこれを支援する存在であると考えていたのです。
つまり彼にとって騎兵とは、勝利を確実なものにし、戦場の情報を支配するための「便利な道具」であって、戦局そのものをひっくり返す切り札ではなかったのです。この現実的で冷静な兵科評価こそ、クラウゼヴィッツの理論が今日でも読み継がれる理由の一つといえるでしょう。