口紅の起源をたどると、そのルーツは約5000年前の古代シュメール文明に行き着きます。シュメール人は、人類史上初めて口紅を発明し、実際に使用した民族であると考えられています。
世界最古の口紅はメソポタミアで誕生した
シュメール文明が栄えたのは、現在のイラクにあたるチグリス川とユーフラテス川流域、いわゆるメソポタミア地方です。当時の人々は、砕いた宝石や赤い岩、鉛などを混ぜて作った顔料を唇に塗り、美しさや社会的地位を表現していました。
特に有名なのが、ウル第一王朝の王后「プアビ」です。彼女の墓からは、貝殻やラピスラズリで装飾された化粧品用の容器とともに、口紅の原料とみられる赤色顔料が出土しており、これが世界最古の口紅の証拠とされています。
エジプトへ広がり、クレオパトラの時代へ
シュメールで生まれた口紅の文化は、やがてナイル川流域の古代エジプトへと伝わりました。エジプトでは男女を問わず化粧が盛んに行われ、赤色の酸化鉄や虫から採れる色素を使った口紅が親しまれました。伝説的な美女として知られるクレオパトラも、鮮やかな赤い口紅を愛用していたと言われています。
現代につながる口紅の歴史
その後、口紅は中国やギリシャ、ローマなど世界各地へ広まり、時代によっては「虚飾の象徴」として批判される時期もありました。しかし19世紀末以降、チューブ入りの口紅が発明されると一気に普及し、今日では世界中の女性(そして男性も)に愛される身近な美容アイテムとなっています。
こうして見ると、私たちが普段何気なく使っている口紅には、5000年もの歴史が詰まっているのです。次に口紅を塗るときは、古代メソポタミアに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。