1930年、シカゴ犯罪委員会からカポネへ送られた手紙とは
1930年6月12日、「公敵ナンバーワン」として恐れられたギャング、アル・カポネ(Al Capone)に対し、シカゴ犯罪委員会(Chicago Crime Commission)が宛てたとされる手紙が存在します。ここでは、その手紙の内容として考えられる一例を紹介します。
当時のシカゴは禁酒法時代の混乱の中にあり、密造酒の取引やギャング同士の抗争が街を脅かしていました。シカゴ犯罪委員会は1919年に設立された民間団体で、組織犯罪の監視と撲滅を掲げて活動していた組織です。そんな委員会が、強大な権力を持つカポネ本人に直接働きかけようとしたのです。
手紙の全文(再現版)
件名:シカゴにおける犯罪活動の終結への呼びかけ
カポネ様
私たちシカゴ犯罪委員会のメンバーは、この街を長らく悩ませてきた犯罪行為の続発を深く憂慮し、本日この手紙をしたためています。あなたは並外れた影響力と力をお持ちの方であり、その力を正しい方向に向ければ、必ずや良い変化をもたらせるはずだと私たちは確信しています。
私たちは敵対者としてではなく、シカゴを愛し、この街の繁栄を願う一人の市民として筆を執っています。これまであなたがご自身や仲間の利益を守るために一定の行動を取ってこられたことは理解しております。しかしながら、今こそ新たな道を選ぶべき時だと私たちは考えています。
どうか現在の進路を見直し、法を守る一市民としての生き方を受け入れていただきたく存じます。それはあなたご自身の幸福のためだけでなく、この街とそこに暮らすすべての人々のためにもなるはずです。
犯罪活動から手を引き、法執行機関に協力されれば、あなたには自らの物語に新しい一章を書き加え、良い形で後世に名を残す機会が訪れます。あなたには善なる力となる可能性があると私たちは信じており、この機会を活かして生き方を改めてくださることを心から願ってやみません。
私たちの訴えを熟慮されたうえで、シカゴがより平和で調和ある未来へ進むことのできる道を選んでいただきますよう、切にお願い申し上げます。
敬具
シカゴ犯罪委員会メンバー一同[署名]
この手紙が示すもの
カポネがこの手紙を実際に読み、行動を改めたかどうかは定かではありません。史実としては、彼は1931年に脱税罪で有罪判決を受け、最終的にアルカトラズ連邦刑務所へ収監されることとなります。
それでもこの手紙は、武力や弾圧ではなく説得によって犯罪者を更生させようとした市民社会の試みとして、大変興味深いものです。「あなたには善になる力がある」という一節には、当時の市民たちがギャングに抱いていた恐怖と期待が入り混じった複雑な感情が、色濃く反映されているように思われます。