アメリカ合衆国は、今日のような経済・軍事の超大国にはなっていなかったでしょう。
西進拡張がアメリカの発展にもたらしたもの
19世紀のアメリカにおける「西進拡張(ウェストワード・エクスパンション)」は、同国の発展を語るうえで欠かせない重要な要因でした。1803年のルイジアナ買収をはじめとする領土の拡大により、アメリカは広大な土地、豊富な木材、金や銀などの鉱物資源といった天然資源へ自由にアクセスできるようになりました。これらの資源は国内産業を支え、経済成長の原動力となりました。
さらに、太平洋岸まで領土を広げたことで、アメリカは単なる東部の一地域国家から、北米大陸を股にかける「大陸国家」へと変貌を遂げました。「明白な天命(マニフェスト・デスティニー)」という思想に後押しされたこの拡張は、大陸横断鉄道の建設やカリフォルニア・ゴールドラッシュといった大きな動きとも結びつき、国土全体の開発と人口移動を促進しました。
もし西進拡張が実現しなかったら?
仮に西進拡張が起こらなかったとすれば、今日のアメリカは現在よりもはるかに小規模な国になっていたと考えられます。ミシシッピ川以東の限られた領土にとどまり、西部が持っていた豊かな資源や広大な農地・市場にアクセスする機会を失っていたでしょう。
その結果、経済規模は大きく制約され、豊富な資源と広大な内需を背景とした工業力や軍事力の発展も望めませんでした。世界有数の経済大国であり、強大な軍事力を擁する超大国としての地位——つまり今日私たちが知るアメリカ合衆国の姿——は、存在しなかった可能性が高いのです。