意外に思われるかもしれませんが、アメリカでは実際に1000ドル紙幣が印刷され、一般にも流通していた時代があります。その歴史は南北戦争期の1860年代にさかのぼり、当初は銀行間の大口取引や政府の資金移動を円滑に行うことを主な目的として発行されていました。
最後の1000ドル紙幣は「1934年シリーズ」
もっとも有名なのが、第22代・第24代大統領グローヴァー・クリーブランドの肖像が描かれた1934年シリーズ(連邦準備券)です。このシリーズが、一般向けに発行された最後の1000ドル紙幣となりました。
最後の印刷は1945年、正式な発行停止は1969年
1000ドル紙幣が実際に印刷されたのは1945年が最後です。その後、連邦準備制度理事会(FRB)は1969年7月14日、500ドル・1000ドル・5000ドル・1万ドルの各高額紙幣について新規発行を正式に中止しました。背景には、日常的な使用需要がほとんどなかったことに加え、マネーロンダリングなどの不正な資金移動に悪用されやすいという懸念がありました。
現在でも法定通貨として有効
「廃止」といっても、すでに発行済みの1000ドル紙幣が無効になったわけではありません。現在も法定通貨として有効ですが、店頭での支払いなど日常的に使われることはまずありません。むしろ希少性が高いことからコレクターズアイテムとして人気があり、保存状態によっては額面の1000ドルを大きく上回る価格で取引されることもあります。
参考:さらに高額だった「10万ドル金貨証明書」
アメリカ史上最高額の紙幣は、ウッドロウ・ウィルソンの肖像が描かれた10万ドル金貨証明書(Gold Certificate)です。ただしこれは1934年〜1935年にかけて連邦準備銀行間の決済専用に発行されたもので、一般流通は一切ありませんでした。現在も連邦準備制度の管理下にあり、民間のコレクターの手に渡ることはありません。
今日、アメリカで一般に流通している最高額面の紙幣は100ドル札です。かつて存在した高額紙幣たちは、アメリカ通貨史における特別な時代を物語る存在として、今も多くの人々を魅了し続けています。