大移動(グレート・マイグレーション)とは
「大移動(グレート・マイグレーション)」とは、アフリカ系アメリカ人が、アメリカ合衆国の農村部が広がる南部から、北部・中西部・西部の都市部へと大規模に移住した歴史的現象を指します。この移動は、大きく二つの段階に分けられます。
第一次大移動(1910年〜1930年)
- 20世紀初頭、主に1910年から1930年にかけて発生しました。
- 当初の動機は経済的な機会の追求でした。多くのアフリカ系アメリカ人は、南部における貧困や人種差別から逃れ、北部の工業都市でより良い仕事と経済的チャンスを求めて移住しました。
- 第一次世界大戦中の産業拡大によって労働力不足が生じ、北部の各都市が南部から積極的に労働者を募集したことも、大きな後押しとなりました。
第二次大移動(1940年代〜1970年代)
- 主に1940年代から1970年代にかけて行われました。
- 南部の農村部から都市部への人々の流れが続いた一方で、カリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州など、西部への移住も本格化しました。
- 手頃な価格の自動車の普及や州間高速道路網(インターステート・ハイウェイ・システム)の整備といった交通手段の大幅な改善により、個人での移動や転居が格段に容易になりました。
- 公民権運動も重要な役割を果たしました。人種的不平等に対する意識と活動が高まるなか、南部の人種隔離(セグリゲーション)や差別から逃れたいという願いが、移住を促す力となりました。
大移動の背景:プッシュ要因とプル要因
大移動の背後には、南部から人々を押し出す「プッシュ要因」と、北部へ人々を引きつける「プル要因」がありました。
プッシュ要因(南部側):貧困、人種差別、リンチ(私刑)、そして人種隔離を制度化したジム・クロウ法などの抑圧。
プル要因(北部側):より良い就職機会、改善された住宅環境、そしてより大きな社会的・市民的権利へのアクセス。
大移動がもたらした影響
大移動は、アメリカ合衆国の人口構成を根本的に変える出来事となりました。北部および西部の都市には、大規模で多様なアフリカ系アメリカ人コミュニティが形成されました。その影響は、人々が去った南部のコミュニティと、移住先となった北部・西部のコミュニティの双方に及び、社会的・政治的・文化的・経済的な面で深い変革をもたらしました。