北米の歴史

ジェファーソンが独立宣言の草案を執筆する際に参考にした思想と人物とは?

トーマス・ジェファーソンが1776年に「アメリカ独立宣言」の草案を執筆した際、彼は独創的に文章を作り上げたわけではありません。当時の啓蒙思想やイギリスの政治文書など、すでに確立されていた複数の思想源から大きな影響を受けていました。ここでは、独立宣言の基盤となった主な参考文献とその内容を紹介します。

1. ジョン・ロック(John Locke)の思想

イギリスの哲学者ジョン・ロックは、独立宣言に最も大きな影響を与えた人物の一人です。特に以下の考え方が宣言の中核となっています。

  • 自然権の概念: すべての人間が生まれながらに持つ「生命・自由・財産」の権利。
  • 統治者の同意: 政府は被統治者の同意によってのみ正当性を持つという考え方。

独立宣言で有名な「生命・自由・幸福の追求」という一節は、ロックの自然権思想を発展させたものだと広く認識されています。

2. 権利章典(1689年)

イギリスで制定された「権利章典(Bill of Rights)」も重要な参照元でした。この文書には以下のような権利が明記されていました。

  • 政府に対して請願を行う権利。
  • 公正な裁判を受ける権利。
  • 言論および集会の自由。

これらの権利は、王権を制限し市民の自由を保障するものとして、アメリカ植民地の人々にも強い影響を与えました。

3. バージニア権利章典(1776年)

ジェファーソンが草案を執筆した同じ年の6月、ジョージ・メイソンによって起草された「バージニア権利章典」も直接的な参考資料となりました。その主な内容は以下の通りです。

  • 生命・自由・幸福の追求に関する権利。
  • 政府を変更または廃止する権利。

特に「政府を変更・廃止する権利」は、独立宣言においてイギリスからの分離を正当化する根拠として活用されました。

4. その他の啓蒙思想家たち

さらに、18世紀ヨーロッパの啓蒙思想家たちの著作も、独立宣言の理論的背景となっています。

  • モンテスキュー(Montesquieu): 権力の濫用を防ぐための「三権分立」の考え方を提唱しました。
  • ヴォルテール(Voltaire): 宗教の自由と言論の自由を強く主張しました。
  • ルソー(Rousseau): 「社会契約論」を通じて、人民と政府の関係についての理論を築きました。

まとめ

このように、ジェファーソンの独立宣言は、ロックの自然権思想、イギリスの権利章典、バージニア権利章典、そしてモンテスキュー、ヴォルテール、ルソーといった啓蒙思想家たちの知恵を集大成したものであり、単なる一人の天才による産物ではなく、時代の思想的潮流の結晶だったのです。