アメリカ合衆国の建国の父たちは、権力の分割(権力分立)に非常に強い関心を持っていました。一人の人物や一つの集団が過大な権限を握れば、権力の濫用が起こりうること――彼らはその危険性を痛感しており、そうした濫用を未然に防げる政治体制の構築を目指したのです。
「抑制と均衡」の仕組み
その結果として生まれたのが、チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)と呼ばれる制度です。この仕組みでは、政府の各部門が互いの権力を制限し合うことができます。
具体例を挙げると、大統領には議会で可決された法律に対する拒否権がありますが、議会も両院それぞれで3分の2以上の賛成票を得られれば、その拒否権を覆すことが可能です。また、最高裁判所は議会が制定した法律を違憲と判断できる一方で、最高裁判事の任命権は大統領が握っています。
このように互いを牽制し合う構造により、政府のいずれか一部門が過度に強大化することを防ぐと同時に、部門間の妥協と協力も促されます。民主主義が効果的に機能するためには、こうした協調関係が不可欠なのです。
連邦主義による権力の分散
さらに建国の父たちは、連邦主義(フェデラリズム)という仕組みも導入しました。これは、権力を連邦政府と州政府の間で分割する考え方です。中央政府が過度に強大になるのを防ぐだけでなく、州ごとの実情に応じた多様な政策立案を可能にするという利点もあります。
200年以上続く体制の礎
建国の父たちが権力の分割に抱いた懸念と、そこから生まれた知恵は、200年以上にわたって存続する政治体制の礎となりました。アメリカ合衆国は世界で最も歴史が長く、最も成功した民主主義国家の一つとされ、その成功の多くは、建国の父たちが権力の分配に払った綿密な配慮に由来すると言えるでしょう。