歴史上、ヨーロッパ人(白人)が奴隷として売られた事例は実際に存在します。その代表例が、16世紀から19世紀にかけて北アフリカで行われていた「バルバリア奴隷貿易(Barbary slave trade)」です。
バルバリア奴隷貿易とは
バルバリア奴隷貿易とは、北アフリカのバルバリア海岸(現在のアルジェリア、チュニジア、リビア沿岸)を拠点としたムスリム(イスラム教徒)の海賊や略奪者たちが、ヨーロッパのキリスト教徒を捕らえて奴隷として売っていた一連の取引を指します。主な拠点となったのは、アルジェ、チュニス、トリポリの三大都市でした。
彼らは地中海や大西洋沿岸の村や船舶を襲撃し、捕らえた人々を身代金目的や労働力として扱いました。イタリア、スペイン、フランスはもちろん、遠く離れたアイスランドやイングランドの沿岸部が襲撃を受けたという記録も残っています。
その規模と実態
研究者の推定によれば、この時代に奴隷とされたヨーロッパ人は100万人を超えるとされています。一部の人々は数十年にわたって拘束され、生涯を奴隷として終えた者もいました。身代金の支払いによって解放されたケースもあれば、ガレー船の漕ぎ手や農作業、家事労働などに従事させられたケースもありました。
歴史から学べること
なお、バルバリア奴隷貿易は「黒人が白人を大規模に奴隷化した」という単純な構図ではありません。実行者は主に北アフリカのベルベル人、アラブ人、オスマン帝国関係者など多様な集団であり、被害者もヨーロッパ人にとどまらず、西アフリカ出身者なども含まれていました。
それでも、この歴史は奴隷制が特定の地域や民族だけの問題ではなく、世界各地でさまざまな形で存在していた複雑な現象であったことを物語っています。大西洋三角貿易のような大規模な奴隷貿易に比べて語られる機会は少ないものの、奴隷制の歴史を包括的に理解するうえで欠かせない重要な一章といえるでしょう。