古典言語であるラテン語というと、その話者たちが彫り上げた美しい彫像のように優雅で高貴なものと想像されがちです。こうしたイメージの一因は、学校教育の側にもあります。侮辱語や罵倒語、卑猥な言葉といったものは、まるで最初から存在しなかったかのように扱われてきたからです。しかし現実はまったく違います。喜劇作家プラウトゥスの作品には次々と侮辱の言葉が繰り出されますし、彼以外にも、ウェルギリウスの洗練された文体とは程遠い語彙を惜しげもなく使った作家は数多くいました。
余談になりますが、かつてフランスの公認語学学校の教師が、「あくまで身を守るためだけに使え」と但し書きをつけて、フランス語の侮辱表現をいくつか教えてくれたことを今でも覚えています。
ラテン語にも罵倒語はあったのか?
結論から言えば、ありました。ほとんどの言語と同じように、ラテン語にも下品な言葉はふんだんに存在していたのです。どんなに洗練された社会であっても、独自の隠語を持つ下層階級が必ず存在するもの。そのことを忘れてはいけません。
キケロが『カティリナ弾劾演説』を Quo usque tandem abutere, Catilina, patientia nostra?(いつまでカティリナよ、我らの忍耐を食い物にするのだ)という名調子で切り出したのは実に見事でした。しかし、ルキウス・セルギウス・カティリナがクーデターを企て、執政官であるキケロ自身の命をも狙っていると知ったとき——元老院会議であの冒頭の言葉を放ったときほど、我らが大雄弁家は忍耐強かったでしょうか。おそらく、そうではなかったでしょう。
古代ローマの侮辱表現リスト
- Acerrimus(アケッリムス):acer(鋭い、棘のある、痛烈な)の最上級。「とびきり辛辣な奴」。
- Bustirapus(ブスティラプス):火葬の薪束を奪う者。墓荒らし、冒涜者。
- Caenum(カエヌム):汚泥、どぶ泥。転じて「薄汚い奴」の意。
- Cinaedus(キナエドゥス):男色者。
- Fraudulens(フラウドゥレンス):詐欺師、ごまかし屋。
- Fraus populi(フラウス・ポプリ):民衆を欺く詐欺師。
- Fugitivus(フギティーウス):逃亡者。
- Fur(フール):泥棒。ここからスペイン語の furtar(盗む)が派生した。
- Furcifer(フルキフェル):悪党、こそ泥。furca(十字架状の棒。兵士が私物を担ぐのに用いたほか、刑具でもあった)+fero(運ぶ)からの造語。
- Impudicus(インプディクス):恥知らず、不誠実な奴。
- Impurus(インプールス):穢れた、不浄な奴。
- Legirupa(レギールパ):法破り。lex, legis(法)+rumpo(壊す)からの造語。
- Leno(レーノー):女奴隷を売りさばく者、淫売業者。
- Parricida(パリキーダ):親殺し。今日とほぼ同じ意味で使われた。
- Pathicus(パーティクス):ろくでなし。
- Periurus(ペリウールス):嘘つき、偽誓者。ius, iuris(法、正義)に関係する。
- Pernicies adulescentum(ペルニキエース・アドゥレセントゥーム):若者の災い、未成年を堕落させる者。
- Planissimus(プラニッシムス):planus(平坦な、単純な)の最上級。「単純バカ」のニュアンス。
- Sacrilegus(サクリレグス):神聖冒涜者、不敬な行いをする者。
- Scelestus(スケーレストゥス):極悪人、ならず者。scelus(悪行)から。
- Sociofraudus(ソキオフラウドゥス):「仲間を裏切る者」。socius(仲間、同盟者)+fraus(欺瞞)からの造語。
- Verbero(ウェルベロー):鞭打ちに値する者。verber(鞭打つための棒、鞭)から。
動詞になると、さらに際どくなります。とりわけ有名なのは pedico(男性と肛門性交を行う)と irrumo(相手の口に性器を含ませる)の二つ。もちろん、fellatio(フェラチオ)という名詞そのものも、当時から普通に存在していました。
美しい彫像や荘重な演説の影に、これほど豊かな毒舌が息づいていたのですね。古代ローマの人間味あふれる一面、いかがでしたか。
本記事はルベン・リオス・ロンガレス(Rubén Ríos Longares)氏の協力によるものです。