バズボム(Buzz Bomb)とは?
バズボム(Buzz Bomb)は、正式名称をフィーゼラー Fi 103といい、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが開発した無人飛行爆弾(V-1)の通称です。イギリスでは、その特徴的なエンジン音から「ドゥードゥルバグ(Doodlebug)」とも呼ばれ、ロンドン市民に大きな恐怖を与えました。実戦で大量に使用されたのは1944年6月以降で、ドイツ軍は連合軍のノルマンディー上陸への報復として、この飛行爆弾をロンドンへ次々と発射しました。
V-1とV-2の呼称の違い
同じくドイツが実戦投入したV-2ロケットは、イギリス国内では「ロケット爆弾」あるいは単に「ロケット」と呼ばれ、独特の音を立てて飛ぶV-1とは明確に区別されていました。V-1は「飛行爆弾」、V-2は「弾道ミサイル」というように、両者はまったく異なるタイプの兵器だったのです。
開発の経緯
V-1は、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の技術者ロベルト・ルッサーによって設計されました。当初は無線による遠隔操縦が構想されていましたが、より簡素な自動操縦装置を採用する案に変更されました。パルスジェットエンジンを動力とするV-1は決して速い兵器ではなく、最高速度でも時速約640km、低高度では時速約560km程度しか出ませんでした。それでも当時の戦闘機による迎撃は容易ではなく、防空上の大きな脅威となりました。
特徴的なエンジン音と基本性能
胴体上部に搭載されたパルスジェットエンジンは、「プットプット」という独特の音を発していたことから、「バズボム(ブンブン鳴る爆弾)」や「ドゥードゥルバグ」というニックネームが生まれました。航続距離は約240km、機体の重量は約1,100kgで、そのうち約820kgが高性能爆薬の弾頭でした。
発射の仕組み
V-1は、地上に設けられた傾斜した発射台(ランプ)からカタパルトによって射出されました。発射後まもなくエンジンが始動し、機体は巡航高度である約760mまで上昇します。その後は目標に到達するか、燃料を使い果たすまで一定の速度で飛行を続け、燃料が尽きればそのまま地面に落下して爆発しました。この仕組みのため、エンジン音が突然止むことが着弾の予兆となり、当時の市民の間では「音が止まったら逃げろ」と言われていました。
命中精度とロンドンにもたらした被害
V-1は命中精度の高い武器とは言えず、多くの場合は大量に発射され、開けた野原や海面に着弾することも珍しくありませんでした。それでも、ロンドンをはじめとするイングランドの各都市にとって深刻な脅威であることに変わりはありませんでした。終戦までに9,000発以上がイギリス本土に向けて発射され、6,000人を超える犠牲者と広範囲にわたる破壊をもたらしました。
まとめ
バズボム(V-1)は、現代の巡航ミサイルの先駆けとも言える無人飛行爆弾です。低速で精度こそ高くなかったものの、大量に発射されることで連合国側に大きな損害と恐怖を与え、戦後のミサイル技術の発展に大きな影響を残しました。