
ホテル級(Hotel class)とは、NATOが付与したコードネームで、ソ連海軍が1959年頃に就役させた弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)の艦級を指します。ソ連側の正式名称は「プロジェクト658」であり、D-2ミサイル発射システムと、R-13ミサイル(NATOコード:SS-N-4 サーク)を搭載していました。
開発の経緯
本級の建造計画は、1956年8月26日に承認されました。設計は、ソ連初の原子力潜水艦であるノヴェンバー級(プロジェクト627)をベースとし、そこにゴルフ級(プロジェクト629)通常動力弾道ミサイル潜水艦のミサイル区画を組み込むという手法が採られました。この結果、高速での水中航行時における操縦性・信頼性が向上し、騒音の低減も実現しています。
一方で、本級には大きな制約もありました。ミサイルを発射するためには一旦浮上する必要があり、浮上後12分が経過しなければ3基のミサイルを発射できない仕組みでした。速度性能は、水中で最大26ノット、水上で18ノットでした。
3つの派生型
ホテル級には、以下の3つのバリエーションが存在します。
- ホテルI型: 初期生産型。D-2発射システムとR-13ミサイルを搭載。
- ホテルII型: 新型のD-4発射システムとR-21ミサイル(NATOコード:SS-N-5 サーク/セルブ)を搭載。射程は約1,200kmに延伸され、水深16mからの水中発射が可能となりました。
- ホテルIII型: より長射程のR-29ミサイルを搭載した最終改良型。
主要諸元(ホテルII型)

排水量: 5,588トン(水中)
全長: 114メートル
全幅: 9.2メートル
喫水: 7.31メートル
最大速度: 水上18ノット / 水中26ノット
乗員: 104名
ホテル級は、ソ連が海上から核報復能力を確立する過渡期において重要な役割を果たした艦級です。なかでもK-19は原子炉事故という悲劇で知られていますが、その経験は以降のソ連原潜の安全性向上につながりました。やがて水中発射可能な後継艦(Yankee級など)の登場により、浮上発射を余儀なくされる本級は第一線を退いていきました。