「畑が水没したとき、農民たちはピラミッドで働いていたのではないか」という説を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、これは広く信じられている誤解です。実際には、農民たちは畑が浸水した時期にピラミッド建設へ動員されたわけではありません。
「氾濫期に農民が動員された」という通説
古代エジプトでは毎年夏になるとナイル川が氾濫し、農地が水に覆われる時期がありました。このため「農作業ができない間、農民たちが大規模公共事業としてピラミッド建設に従事したのだ」という説がかつては主流でした。しかし、近年の考古学研究によって、この見方は大きく修正されています。
ピラミッドを造ったのは熟練の職人たち
ピラミッドの建設を担ったのは、石工・大工・測量士といった高度な技術を持つ専門の労働者や建築家たちでした。彼らは国家からパンやビールなどの報酬を受け取り、組織的な班ごとに分かれて数十年という長い歳月をかけて工事を進めました。ギザの三大ピラミッドの一つ、クフ王のピラミッドだけでも約20年の工期を要したと考えられています。
考古学が明かす労働者の実態
ギザ台地周辺から発掘された労働者集落の遺跡では、大量の食料貯蔵施設や医療の手跡のある人骨などが見つかっています。これらの発見は、建設に関わった人々が強制的に使われた奴隷ではなく、きちんと管理され支払いを受ける職業的労働者だったことを裏付けています。
まとめ
畑の浸水とピラミッド建設を結びつけるイメージは魅力的ですが、史実とは異なります。ピラミッドは、熟練した労働者と建築家たちが長い年月をかけて計画的に築き上げた、古代エジプトの技術力の結晶なのです。