古代エジプトでは、王族や貴族の遺体を守るために石棺(サルコファガス)が作られました。石材には主に石灰岩、砂岩、花崗岩が用いられ、銅や青銅の道具、そして砂や水などの研磨材を駆使して、驚くほど精密な仕上がりが実現されました。ここでは、石棺制作に使われた代表的な道具と工程を7つの段階に分けて詳しく紹介します。
1. 採石と切断
まず、適切な品質の石材が採れる採石場を見つけるところから作業が始まりました。ノミ、ハンマー、くさびなどの道具を使い、巨大な石のブロックを採石場から切り出します。切り出された石材は、加工場または建設現場まで運ばれました。
2. 均しと成形
熟練した職人たちは、銅や青銅製のノミ、鋸、さらに砂と水といった研磨材を活用して石のブロックを整形していきました。ノミで余分な石を削り落とし、全体の形を整えます。ヒエログリフや装飾模様といった繊細な部分には、専用のノミや彫刻道具が用いられました。
3. 中空化と内面の平滑化
石棺の内部をくり抜く際には、「コアドリリング(中空ドリル)」と呼ばれる技法が使われました。これは、一連の穴を開けた後、ノミで穴と穴の間の石を取り除き、遺体を納めるための中空部分を作り出す方法です。その後、砂と水などの研磨材で内面を滑らかに磨き上げ、凹凸や欠点を取り除きました。
4. 彫刻と装飾
精巧な意匠や華麗な彫刻が施された石棺では、職人がノミや小型のハンマーを使って、浮き彫り(レリーフ)、ヒエログリフ、さまざまな装飾要素を作り上げました。彫刻家たちは石棺のデザインの細部や特徴を、ひたむきに入念に彫り込んだのです。
5. 結合と組み立て
石棺が蓋と本体のように複数の部品で構成される場合、接合面は丁寧に研磨され、隙間なくぴったりと組み合わされました。蟻継ぎ(ありつぎ)やほぞ継ぎなどの高度な技術を用いて、各部材をしっかりと固定しました。
6. 磨きと仕上げ
全体の形状、彫刻、装飾が完成すると、最後に石棺全体を磨き上げ、滑らかで光沢のある表面へと仕上げていきました。研磨には砂、水、軽石などが使われています。
7. 運搬
完成した石棺は、ピラミッドやその他の葬祭施設内にある墓室など、最終的な安置場所へと運ばれました。傾斜路(スロープ)やそり、そして大勢の人員の力を動員して、非常に重い石材を目的地まで移動させたのです。
時代によって異なる道具と技法
なお、使用された道具・技法・材料は、古代エジプトの時代(古王国、中王国、新王国など)、当時入手できた資源、そして求められる工芸の水準によって大きく異なりました。同じ「石棺」でも、時代ごとにその作り方には大きな違いがあったのです。