
カンクンから旅を始める
マヤ世界への考古学の旅は、メキシコのキンタナ・ロー州カンクンから始まります。市内北部のエル・メコ遺跡、南部のレイ遺跡とサン・ミゲリート遺跡を訪れることができます。これらの遺跡のそばにはカンクン・マヤ博物館があり、州内はもとより、パレンケ、チチェン・イッツァ、コマルカルコといった代表的な遺跡の出土品が展示されています。
カンクンの湾の対岸にはイスラ・ムヘーレス(女の島)が浮かびます。この名は、マヤの女性たちが成人の儀式の巡礼を行ったことに由来するといわれています。島の南端には、豊穣の女神イクセルを祀る神殿の遺跡が今も残っています。
バリャドリッド経由でコバーとエク・バラムへ
西へ進みバリャドリッドに向かうと、そこを拠点にコバー遺跡とエク・バラム遺跡を訪れることができます。コバーは、サクベ(マヤの白い道)で結ばれたセノーテ(石灰岩の陥没穴にできる泉)を持ち、天文観測所とノホッホ・ムルのピラミッドで知られています。一方のエク・バラムは、怪物が口を大きく開けた姿を描いた漆喰の門で有名です。バリャドリッドでは、地域の考古資料を収蔵するサン・ロケ博物館を見学できます。
チチェン・イッツァ――マヤを代表する聖地
さらに西へ進むと、マヤ世界を代表する場所のひとつ、チチェン・イッツァ遺跡にたどり着きます。羽毛のある蛇の神ククルカンを祀るエル・カスティーヨのピラミッド、天文観測所「カラコル」、イグアナのセノーテ、そして犠牲の泉(セノーテ・サグラド)などが主な見どころです(詳細は『Desperta Ferro 考古学と歴史』第22号「神々の間――古代マヤの神聖な世界」参照)。近くにはチチェン・イッツァ・マヤ文化博物館があり、またイキル・セノーテや、雨と豊穣を祈る古代の儀式で名高いバランカンチェ洞窟も訪れる価値があります。

イサマルとメリダ――宗教融合の証
メリダへ向かう途中、マヤの「黄色い街」イサマルでは、キニッチ・カクモに捧げられたピラミッドの上に直接建てられたサン・アントニオ・デ・パドゥア修道院に、宗教の融合(シンクレティズム)の好例を見ることができます。
マヤの「白い街」メリダには、2012年12月21日のマヤ暦の終焉を機に開館したマヤ世界大博物館があります。市街地とその周辺にも保護された遺跡が点在し、春分の日の出に天文学的に正確に向けられた「七つ人形の神殿」で知られるディビルチャルトゥン遺跡や、マヤ民族博物館を訪れることができます。メリダの南には、近隣のチチェン・イッツァの栄華を再現しようとしたマヤパン遺跡があり、そこには迫りくる文明崩壊の痕跡がはっきりと残されています。
プウク・ルートの遺跡群
南へ向かいプウク・ルートをたどると、ウシュマル遺跡があります。「尼僧院」と呼ばれる四角形の建物群や魔法使いのピラミッドなど、よく知られた建造物が立ち並びます。プウク様式の建築群としては、雨の神の顔が並ぶファサードで知られるコッツ・ポープの館を持つカバー、壮麗な宮殿で名高いサイイル、記念碑的な入口のアーチと「柱の館」が見どころのラブナーが挙げられます。
カンペチェ州の遺跡
西海岸のカンペチェへ向かう途中には、ディビルノカック遺跡とエズナ遺跡があります。後者は巨大なアクロポリスを持ち、宮殿とピラミッドの機能を併せ持つ5階建ての建造物ノホチナーで知られています。カンペチェ市では、サン・ミゲル要塞内の考古学博物館が、マヤの工芸品の最も貴重なコレクションのひとつを所蔵しています。

チアパス州――熱帯ジャングルの中のパレンケ
チアパス州の熱帯ジャングルの深くには、パレンケ遺跡があります。7世紀の支配者パカル大王の最期の眠りの場所である有名な碑文の神殿が際立っています。パカルの遺体はメキシコシティの国立人類学博物館で見ることができ、パレンケのアルベルト・ルス遺跡博物館にはその復元が展示されています。南のオコシンゴには、迷路、宮殿、階段、漆喰の壁画が組み合わさった巨大なアクロポリスを持つトニナー遺跡があります。博物館には捕虜を描いた見事な彫刻が収められています。

ウスマシンタ川流域――ボナンパクとヤシュチラン
グアテマラとの国境に近いウスマシンタ川の中流域、モンテス・アスレス自然公園内には、壁画で覆われた3つの部屋で知られるボナンパクがあります。川から船でしかアクセスできないヤシュチラン遺跡では、地元のエリート層の女性たちを描いた有名な楣(まぐさ)石を見ることができます。川を下り、グアテマラ側の岸にはピエドラス・ネグラスの遺跡が残ります。その象徴的な遺物――40号石碑、3号パネル、1号玉座――は、グアテマラ首都の国立考古学人類学博物館で見学できます。
グアテマラとホンジュラスへ
グアテマラ国内では、戦略的な防衛上の要地にあったため、征服された最後のマヤ都市のひとつとなったイクシムチェ遺跡を訪れることができます。首都グアテマラシティには国立考古学人類学博物館のほか、葬祭用陶器の最重要コレクションのひとつを所蔵するポポル・ヴフ博物館があります。エル・フロリドから国境を越えてホンジュラスに入ると、コパン遺跡があります。象形文字の階段と地下トンネル網が有名です(『Desperta Ferro 考古学と歴史』第23号「大地と空の間――古代マヤの都市計画と建築に関する覚書」参照)。遺跡内にはコパン彫刻博物館があり、ロサリラ神殿の復元が建つ広場の前にあります。近くの町にはマヤ考古学博物館もあります。グアテマラに戻ると、キリグア遺跡にたどり着きます。

ペテン地方――フローレスとティカル
旅は北へ向かい、ペテン・イツァ湖の中ほどに位置する島の町フローレスへ。ここには、1697年に征服された最後のマヤ都市タヤサルがありました。さらに北には、高くそびえるピラミッドで有名なティカル遺跡があります。南東のヤシャ・ナクム・ナランホ国立公園では、船でトポシュテ島に渡ることができます。近くのヤシャのエリートたちが住んでいたと考えられるこの島は、複数の建造物を結ぶ道路網が特徴です。

カラクムルとトゥルム――旅の締めくくり
ベリーズの一部を横断してメキシコに戻ると、チュトゥマルの東海岸に着きます。ここには、天界・地上・地下界というマヤ世界の三層構造をセイバの木で結ぶという興味深い展示が特徴のマヤ文化博物館があります。ここから内陸へ入り、強大な都市カラクムルへ向かいましょう。近くのチカンナー、ベカン、シュプヒルも合わせて訪れたい遺跡です。旅の終わりは再び東海岸、楽園のようなビーチにたたずむトゥルム遺跡です。ここはコスメル島やイスラ・ムヘーレスへの巡礼の出発点となった重要な拠点でした。
