南シベリアのアルタイ山脈で、先史時代を研究する考古学者たちが、約4万5000年前のライオン像の断片を発見しました。年代が確定されれば、これは世界最古の動物彫刻となる可能性を秘めた、極めて貴重な遺物です。

ロシア・シベリア、アルタイ地方のデニソワ洞窟第11層から出土したライオン像の断片。
マンモスの象牙に刻まれた精巧なミニチュア
赤色顔料(オーカー)で彩色されたハッチング(影線)が施された胸、力強い後脚の始まり……。完全な姿では残っていないものの、この遺物は、洞窟ライオン(Panthera spelaea)を描いた可動芸術(携帯芸術)の例外的な作品です。ケブカマンモスの象牙を彫刻して作られたこの繊細なミニチュアは、全長4.2センチ、厚さ8ミリ。2019年9月、ノボシビルスク考古学・民族学研究所の調査チームによって、アルタイ北部のデニソワ洞窟から出土しました。この発見は、2019年11月20日付のSiberian Times紙によって報じられています。

頭部は失われていますが、マンモス象牙に彫られたこの像には、ネコ科動物特有の長く伸びた胴体と、後脚の始まりがはっきりと認められます。© Siberian Times

さまざまな角度から見たライオン像。© Siberian Times
デニソワ人で知られる著名な遺跡
デニソワ洞窟が世界的に有名になったのは、2010年の発見がきっかけです。当時見つかったのは、4万1000年前に生きていた「少女」の小指の指骨でした。このミトコンドリアDNAの分析により、それまで知られていなかった未知の人類種に属することが判明したのです。「デニソワ人」と名付けられた私たちの遠い親戚たちは、中央アジアのアルタイ山脈において、ネアンデルタール人やホモ・サピエンスの祖先と同時期に共存していました。

ロシアの先史洞窟、デニソワ洞窟の入口。© Siberian Times
作者はデニソワ人か、それとも現生人類か
デニソワ洞窟は最も研究が進んだ先史遺跡の一つですが、この作品の作者が誰なのかは、現時点では明らかになっていません。つまり、このライオン像がデニソワ人の手によるものなのか、あるいは現生人類(ホモ・サピエンス)が彫ったものなのかは定かではないのです。4万5000年前という年代が確定すれば、この「デニソワのライオン」は、世界最古の動物彫刻である可能性すらあります。

フランス・アルデシュ県ショーヴェ洞窟の壁面を飾る「ライオンのパネル」。3万7000年前の洞窟壁画芸術。© Christophe Lepetit / only France / AFP
上部旧石器時代におけるライオンの象徴性
上部旧石器時代の人々の象徴的思考において、ライオンが重要な役割を果たしていたことを示す証拠は、ますます増え続けています。フランス・アルデシュ県のショーヴェ洞窟の壁面を飾る、3万7000年前の雌ライオンの壮大な壁画。ロシア・ウラル地方で見つかった洞窟ライオンの聖域。さらに、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にあるホーレンシュタイン=シュターデル洞窟で1939年に出土し、同じシュヴァービア・ジュラ地方のホーレフェルス洞窟からも2002年に発見された、マンモス象牙製の「獅子頭人間」像(3万~4万年前)。ライオンは、何千年にもわたり「百獣の王」であり続けたのでしょうか。
洞窟ライオンとは
(2015年9月公開のSciences et Avenir誌の記事より)
「洞窟ライオンは、30万年前から約1万1000年前にかけて、ユーラシア全域に生息していました。しかしこのネコ科動物の系統関係については、いまだに学術的な合意が得られていません。現在アフリカに生息するライオンと同種だとする説もあれば、異なるという見解もあります。ただし、Panthera leo fossilis(古代ライオン)は、Panthera leo 属の最初の代表と考えられています。最古の標本は、中期更新世(80万年前~20万年前)の地層からイタリア、イングランド、ドイツで発見されています。その後期更新世の後継種である Panthera leo spelea は、10万年以上前に出現したとされます。この種に属する最後の個体は、約1万500年前の南ヨーロッパで記録されています」。