アメリカのコインをよく見ると、1セント硬貨(ペニー)や5セント硬貨(ニッケル)の縁は滑らかですが、10セント硬貨(ダイム)や25セント硬貨(クォーター)、半ドル硬貨の縁には細かいギザギザ(溝)が付いています。このギザギザは「リーディング(reeding)」と呼ばれ、歴史的な背景と現代的な実用性の両方から生まれたものです。
歴史的な理由:貴金属の削り取りを防ぐため
かつて、ダイムやクォーターなどの額面の高い硬貨は金や銀といった貴金属で造られていました。当時は、コインの縁から少しずつ金属を削り取って溜め込む「コインクリッピング」と呼ばれる不正行為が横行していました。削り取られたコインは一見してもわかりにくく、実際の金属含有量は額面の価値より下回ってしまう問題がありました。
そこで造幣局は、硬貨の縁にギザギザの溝を刻むようになりました。こうすることで縁が削られたことが一目でわかるようになり、不正行為を抑止する効果があったのです。
現代におけるリーディングの役割
現在のアメリカのコインは銅やニッケルなどの安価な金属で作られており、削り取るメリットはほぼありません。それでもリーディングが残されているのは、主に次のような理由があります。
- 偽造防止:正規の製造設備でしか再現が難しい細かい加工により、偽造コインの製造を困難にしています。
- 視覚障害者への配慮:指先で触れるだけで硬貨の種類を判別できるようにするためです。
- 伝統の維持:歴史を受け継ぐデザインとして、今日まで定着しています。
縁が滑らかなコインの理由
一方、1セント硬貨と5セント硬貨の縁が滑らかなのは、これらの硬貨が歴史的に低額面であり、貴金属を使用していなかったためです。金属を削り取られる心配がほとんどなかったことから、当初からリーディングなしで造られてきました。
注意:縁の形状は「未使用」「使用済み」とは無関係
ときどき、「縁が滑らかなコインは未流通の新品で、ギザギザがあるのは流通済みの中古コインだ」といった説明を目にすることがありますが、これは誤りです。コインの縁の形状は流通状態とは一切関係なく、硬貨の種類ごとに最初から決まっています。コインの状態(未使用品か流通品か)は、表面の傷や光沢などで判断される別の概念です。