ギリシャ神話において、ワインと豊穣、そして狂気を司る神として知られるディオニュソス。その印象的な名前は、一体どこから来たのでしょうか?実は「ディオニュソス」という名前は、ギリシャ語以前のさらに古い言葉に起源を持つと考えられています。
先ギリシャ語形「*Diwonusos」
言語学的研究によれば、ディオニュソスの名前の由来は、先ギリシャ語(ギリシャ語が成立する前の言語)の形「*Diwonusos」にさかのぼります。この語は、「昼」や「空」を意味する「*diwos」と、「島」や「土地」を意味する「*nusa」という二つの要素から成り立っている可能性があります。
「空から来し者」か「島より来し者」か
この解釈に従えば、ディオニュソスの名前は「空から来た者」あるいは「島から来た者」という意味にとらえることができます。ディオニュソスがもともと外来の神であった可能性を示唆する、非常に興味深い説といえるでしょう。
フリュギア語との関連を示す別説
一方、別の説では、この名前は小アジアの古代民族が用いたフリュギア語の「*dinu」(咆哮、物音)に関連すると考えられています。この説は、熱狂的な音楽や踊り、歓呼の声を伴うディオニュソス信仰の儀礼の様子とよく合致しており、多くの研究者の関心を引いています。
まとめ
どの説が正しいにせよ、「ディオニュソス」という名前がギリシャ固有のものではなく、より古い時代や異文化との交流の中で形づくられたことは間違いありません。実際、ミケーネ文明の線文字B文書にもすでにディオニュソスの名が確認されており、この神とその名前の歴史は、ギリシャ神話の始まりよりもさらに深い過去へとつながっているのです。