「ギリシャの鳥マスク」と一口にいっても、何を指すのかによって制作された時代は大きく異なります。この記事では、代表的な候補である古代ギリシャ演古代ギリシャ演劇の鳥の仮面と、ボイオティア地方の鳥顔テラコッタ像に分けて、それぞれの成立時期と背景を解説します。
古代演劇の鳥の仮面(紀元前5世紀頃)
古代ギリシャでは、悲劇や喜劇の上演において仮面が不可欠でした。一人の俳優が複数の役を演じ分けるため、また大きな野外劇場でも表情を伝えるために用いられていたといわれています。
とりわけ有名なのが、喜劇作家アリストファネスの戯曲『鳥』です。この作品は紀元前414年にアテネで初演され、合唱隊が鳥に扮して登場しました。上演の際には羽根をまとった衣装や、鳥をかたどった仮面が使われたと考えられており、「鳥マスク」という言葉に最も近い存在といえます。
ボイオティアの鳥顔像(紀元前8〜7世紀頃)
考古学的な遺物として知られているのが、中央ギリシャのボイオティア地方で作られたテラコッタ製の小像群です。くちばしのような鼻を持つ鳥のような顔立ちから、「鳥女」や「セイレーン像」などと呼ばれることがあります。
これらはおおむね紀元前8世紀末から前7世紀(幾何学様式末期から初期アルカイック期)にかけて制作されたもので、墓の副葬品や神への奉納品として使われたと考えられています。体内に鈴を備えた「ベル・アイドル」と呼ばれるタイプもあり、宗教的・呪術的な意味合いがあったとみられます。
民俗行事に見られる鳥の仮面
さらに、ギリシャ各地で行われるカーニバル(アポクリア)などの民俗行事には、動物や鳥を模した仮面や着ぐるみが登場します。これらは古代のディオニュソス祭の伝統を受け継ぐともいわれますが、現在見られる形態の多くは中世以降から近代にかけて形成されたものです。
まとめ
ギリシャの「鳥マスク」の制作時期は、対象となるものによって以下のように異なります。
- 演劇の鳥の仮面:紀元前5世紀(『鳥』の初演は紀元前414年)
- ボイオティアの鳥顔像:紀元前8〜7世紀頃
- 民俗行事の鳥の仮面:中世以降〜近代に現在の形へ発展
特定の作品や遺物を指している場合は、その正式名称や所蔵する博物館を確認すると、より正確な年代を特定することができます。