V・ゴードン・チャイルド(Vere Gordon Childe、1892年~1957年)は、オーストラリア生まれでイギリスを拠点に活動した考古学者・先史学研究者です。現代考古学の理論と方法論の先駆者の一人とされ、その業績は今日なお学界に大きな影響を与え続けています。
シドニーに生まれ、オックスフォード大学で学んだ後、ヨーロッパ先史時代の研究を専門としました。1925年の著書『ヨーロッパ文明の曙光』で一躍名声を確立し、1946年から1956年まではロンドン大学考古学研究所の所長を務めるなど、20世紀前半の考古学界を牽引しました。
「新石器革命」という概念
チャイルドの最も重要な貢献の一つが、「新石器革命」という概念です。この考え方は、1936年の著書『人間文化の成立』(原題:Man Makes Himself)で初めて提示されました。
彼は、狩猟採集から農耕と定住生活への移行こそ、人類史上における革命的な転換点であると主張しました。この変化は食料供給の安定をもたらし、社会階層の出現、文字をはじめとする技術の発明、都市の成長といった、深遠な社会的・文化的変革へとつながったと述べています。
社会進化への関心
チャイルドは初期人類社会の社会的進化にも強い関心を抱いていました。人類社会は、小規模で平等主義的な集団から、大規模で複雑な文明へと、段階的に発展してきたと考えたのです。さらに、各段階にはそれぞれ固有の経済的・社会的・政治的制度が備わっていると説きました。また、都市の成立を「都市革命」と呼び、新石器革命に続く第二の大転換として位置づけました。
マルクス主義考古学の開拓
チャイルドは自らをマルクス主義者と公言し、その原理を考古学研究に積極的に取り入れました。過去の社会の物質的諸条件を考古学的に解明し、それを通じて当時の社会構造や政治構造を理解できると考えたのです。彼のマルクス主義考古学は賛否両論を巻き起こしましたが、考古学研究に新たな視座と研究の道を切り開いた点は高く評価されています。
後世に遺したもの
チャイルドは、現代考古学の発展において中心的な役割を果たした人物でした。新石器革命、社会進化、マルクス主義考古学に関する研究は学問全体に絶大な影響を及ぼしており、彼は今なお20世紀で最も重要な考古学者の一人と見なされています。1957年に故郷オーストラリアで生涯を閉じましたが、その思想的遺産は世界中の考古学者たちに受け継がれています。