18世紀後半から19世紀半ばにかけて起こった産業革命時代のイギリスでは、社会のさまざまな階層の人々がそれぞれのスポーツや身体活動を楽しんでいました。都市化と労働時間の変化とともに、スポーツは娯楽として大きく発展していったのです。ここでは、当時のイギリスで人気を集めていた代表的なスポーツを紹介します。
1. クリケット
クリケットはこの時代のイギリスを代表する国民的スポーツでした。2つのチームがフィールドで対戦し、バットでボールを打ってラン(得点)を稼ぐことを目的とします。クリケットクラブが各地で設立され、試合が頻繁に開催されるようになると、大勢の観客を集める一大イベントへと成長しました。
2. フットボール(サッカーの原型)
現代のサッカーにつながるフットボールの原型も、産業革命期にすでにプレイされていました。初期のフットボールは地域ごとにルールが異なり統一されていませんでしたが、いずれもチーム同士が身体をぶつけ合いながら、ボールを相手陣地や指定エリアまで運ぶという競技形式が共通していました。後にルールが整備され、近代サッカーへと進化していきます。
3. 競馬
競馬はイギリスで長い歴史を持つ伝統的な娯楽であり、産業革命期にも幅広い人気を誇っていました。専用の競馬場でレースが開催され、王室や貴族といった上流階級から一般庶民まで、さまざまな背景を持つ人々が観戦に訪れました。
4. ボクシング
ボクシングの試合も盛んに組まれ、多くの観客に楽しまれていました。当時は「プジリズム(拳闘)」と呼ばれ、現在のようなグローブではなく素手で戦うベアナックル・ボクシングが主流でした。選手たちの力強さと持久力が勝負を分ける、過酷で迫力ある競技として親しまれていました。
5. 陸上競技
走り幅跳びや走高跳びなどの跳躍種目を含む陸上競技も、この時代のスポーツ文化の一部でした。ただし、クリケットのような組織的な競技と比べると、より informal で地域密着型のイベントとして行われることが多かったようです。
6. 水上スポーツ
ボート漕ぎ(ローイング)やセーリングといった水上スポーツは、主に裕福な層の間で人気がありました。特にロンドンのテムズ川では、ボートクラブの設立やレガッタ(ボートレース)が盛んに行われ、川面を舞台とした競技文化が花開きました。
7. 体操と身体文化
古代ギリシャの理想とされた肉体美や健康思想に触発され、身体文化や体操への関心も高まっていきました。各地に体操クラブが設立され、心身の健康や健全なライフスタイルの促進が図られました。これは近代体育教育の萌芽とも言える動きです。
8. その他のスポーツ
このほかにも、アーチェリー(弓術)、クォイツ(輪投げ)、ビリヤード、そして田園地方に古くから伝わる伝統的なゲームなど、多彩なスポーツや遊戯が楽しまれていました。
スポーツに見る階級社会
注目すべきは、スポーツへの参加や観戦が当時の社会的な身分差を色濃く反映していた点です。一部のスポーツは庶民にも開かれていましたが、競馬や水上スポーツのように主に上流・中流階級が楽しむものも多くありました。誰がどのスポーツに触れられたかという違いは、産業革命期のイギリスにおける階級格差や経済的不平等の縮図と言えるでしょう。