はじめに
1980年代は、米ソ冷戦が最も緊張を高めながらも、その終結へと向かい始めた激動の10年でした。レーガン政権下のアメリカとゴルバチョフ率いるソ連による軍縮交渉、経済政策の大きな転換、そして東西関係の緊張と緩和など、世界史の転換点となる出来事が次々と起こりました。ここでは、1980年代の主要な歴史的出来事を年ごとに振り返ります。
1980年:五輪ボイコットとレーガン政権の誕生
- ソ連のアフガニスタン侵攻への抗議として、アメリカはモスクワ夏季オリンピックをボイコットしました。
- ロナルド・レーガンが現職のジミー・カーターを破り、アメリカ大統領に当選しました。
- テヘランのアメリカ大使館占拠事件(イラン人質危機)が継続しており、後に444日間に及ぶ長期事件となることが明らかになりました。
- アメリカでは航空、通信、トラック運輸などの分野で規制緩和が進み、経済政策の転換が始まりました。
1981年:イラン人質危機の解決
- 444日間に及んだイラン人質危機がようやく終結。人質が解放される代わりに、アメリカはイラン資産の凍結解除と内政不干渉に合意しました。
- レーガン大統領が暗殺未遂事件に遭いましたが、奇跡的に一命を取り留めました。
- アメリカ経済は深刻な不況に見舞われ、失業率は10%台へと上昇しました。
1982年:軍縮交渉の幕開け
- 米ソ両国は戦略兵器削減条約(START)の交渉を正式に開始しました。
- レバノン内戦の停戦支援のため、アメリカ海兵隊が多国籍軍の一員としてベイルートに展開しました。
- アメリカでは深刻な干ばつにより農作物の被害と水不足が発生し、失業率は約10.8%でピークに達しました。
1983年:緊張の高まりとグレナダ侵攻
- レーガン大統領が宇宙配備のミサイル防衛構想「戦略防衛構想(SDI)」、通称「スターウォーズ計画」を提唱しました。
- アメリカはカリブ海の島国グレナダに侵攻し、マルクス主義政権の打倒に成功しました。
- ソ連が韓国民間旅客機(KAL007便)を撃墜した事件が発生し、東西の緊張が一気に高まりました。
- レーガン大統領がソ連を「悪の帝国」と表現し、強硬な姿勢を示しました。
1984年:レーガンの圧勝再選とエチオピア飢饉
- レーガン大統領がウォルター・モンデール候補を大差で破り、50州中49州を制して再選しました。
- 米ソは中距離核戦力(INF)全廃条約に向けた交渉を開始しました。
- エチオピアで深刻な飢饉が発生し、数十万人規模の犠牲者が出ました。この悲劇は世界的な支援活動を呼び起こしました。
- アメリカ経済は本格的な回復局面に入り、景気拡大が始まりました。
1985年:ゴルバチョフの時代の到来
- ミハイル・ゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任し、「ペレストロイカ」(改革)と「グラスノスチ」(情報公開)を掲げた改革路線を開始しました。
- 米ソ首脳がジュネーブで会談し、首脳外交が復活しました。
- エチオピア飢饉への支援を目的とした大規模チャリティーコンサート「ライブエイド」が世界中で開催されました。
1986年:チェルノブイリ原発事故
- ソ連ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で大規模な爆発事故が発生し、大量の放射性物質が欧州全域に拡散しました。
- 米ソ首脳がアイスランドのレイキャビクで会談しましたが、包括的な核軍縮での合意には至りませんでした。ただし、この会談は翌年のINF条約締結の重要な足掛かりとなりました。
- スペースシャトル「チャレンジャー号」が打ち上げ直後に爆発し、乗員全員が犠牲になりました。
- アメリカ政府の秘密武器売却と反政府勢力への資金流用が絡む「イラン・コントラ事件」が発覚しました。
1987年:INF条約調印とブラックマンデー
- 米ソは中距離核戦力(INF)全廃条約に調印しました。両国の中距離核ミサイルを全面的に廃棄する、史上初めての実質的核軍縮条約です。
- ニューヨーク株式市場で「ブラックマンデー」と呼ばれる歴史的暴落が発生し、世界同時株安へと波及しました。
- レーガン大統領が西ベルリンの壁の前で「この壁を取り壊しなさい」という有名な演説を行いました。
1988年:冷戦の雪解け
- ジョージ・H・W・ブッシュがマイケル・デュカキス氏を破り、アメリカ大統領に当選しました。
- 米ソの合意に基づき、アフガニスタン駐留ソ連軍の撤退が開始されました。
- ソウル夏季オリンピックが開催され、東西陣営が再び同じ舞台で競いました。
- 8年間に及んだイラン・イラク戦争が停戦しました。
- アメリカ経済は長期にわたる景気拡大を享受し、雇用情勢も大幅に改善しました。
おわりに:1980年代が遺したもの
1980年代末には、東欧諸国の民主化が加速し、1989年にはベルリンの壁が崩壊。同年12月のマルタ米ソ首脳会談では、事実上の冷戦終結が確認されました。レーガンとゴルバチョフという二人の指導者の対話は、核軍縮と冷戦終結への道を開いたと高く評価されています。また、規制緩和と減税によるアメリカ経済の再生、グローバル化の加速、エイズや環境問題といった新たな課題の浮上など、現代世界の骨格となる多くの要素が、まさにこの10年間に形作られたのです。