「知識そのものが力である」という有名な言葉は、一般にはイギリスの哲学者フランシス・ベーコン(Sir Francis Bacon)の名言として広く知られています。しかし、この英語のフレーズそのものがベーコンによって直接書かれたという確証はないと考えられています。
最も近い出典は『聖なる瞑想』(1597年)
この格言に最も近い表現が見られるのは、ベーコンが1597年に著した宗教的・哲学的な考察集『聖なる瞑想』(Meditationes Sacrae)です。そこでベーコンはラテン語で次のように述べたとされています。
「ipsa scientia potestas est」
これは直訳すると「知識そのものが力である」という意味になります。今日私たちが目にする英語のフレーズ「knowledge itself is power」は、このラテン語の一節が後世に翻訳・言い換えられたものだとされています。
なぜ出典が曖昧なのか
ベーコンの著作の中に、この言葉と完全に一致する一節が明確な形で確認できないため、学者たちの間ではその正確な出典について議論が続いてきました。また、ベーコンと同時代の思想家トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes)も「知識は力である」という趣旨の発言を残しており、二人の思想の影響関係もこの格言の帰属を複雑にしている一因です。
後世に与えた影響
いずれにせよ、「知識は力である」という思想はベーコンの経験論的な哲学、すなわち観察と実験による自然の理解こそが人類に真の力をもたらすという信念と深く結びついています。この理念は近代科学の精神を象徴する言葉として、今日まで世界中で引用され続けています。