歴史クイズ

なぜアメリカの大統領と副大統領は対立せず、「相棒」として同じチームで立候補するのか?

一つのチケットで戦う大統領と副大統領

アメリカ合衆国の大統領選挙では、大統領候補と副大統領候補は常にペア(いわゆる「チケット」)として一緒に立候補します。有権者は大統領候補に投票する際、自動的にその副大統領候補にも票を投じることになり、両者は一組として当落が決まります。では、なぜこの二人は対立候補ではなく、パートナーとして戦うのでしょうか? その答えは、建国初期の歴史的な失敗と、それを教訓とした憲法改正にあります。

建国初期には「ライバル同士」だったこともある

実は、アメリカ建国当初の制度では、大統領と副大統領が対立関係になることがありました。当初の憲法では、選挙人が2票を投じ、最多得票者が大統領、次点者が副大統領となる仕組みでした。つまり、副大統領は事実上の「準優勝者」だったのです。

この制度は1796年の選挙で問題を露呈しました。連邦党のジョン・アダムズが大統領に当選した一方、次点だったのは政敵である民主共和党のトーマス・ジェファーソンでした。その結果、与野党のトップが正副大統領として行政を共に運営しなければならず、政治は深刻な対立に陥りました。

憲法修正第12条による制度改革

さらに1800年の選挙では、同じ党のジェファーソンとアーロン・バーが同票となり、長期間決着がつかない混乱も発生しました。これらの問題を受けて、1804年に発効した憲法修正第12条により、選挙人は大統領候補と副大統領候補に対して別々に投票することが明確化されました。

現代の制度では、各政党の大統領候補が自ら副大統領候補(ランニングメイト)を選び、党大会で正式に指名されます。こうして大統領候補と副大統領候補は、最初から一つのチームとして選挙戦を戦うことになったのです。

なぜ「相棒」が必要なのか?

大統領候補が副大統領候補をパートナーとして選ぶ理由は主に三つあります。

1. バランスの取れたチケット

年齢、出身地域、イデオロギー、経歴など、大統領候補との補完性を考慮して副大統領候補が選ばれることが多く、これにより幅広い層の有権者の支持を獲得しやすくなります。

2. 政権運営の補完性

外交、法律、行政などの分野で大統領に不足している経験や専門知識を、副大統領が補うことが期待されます。

3. 万一の際の後継者

大統領が死去、辞任、弾劾などで職務を遂行できなくなった場合、副大統領が直ちに大統領職を継承します。信頼できるパートナーの存在は、国家の安定に直結するのです。

副大統領の役割とは

憲法上、副大統領は上院の議長を務め、賛否同数の場合に決定票(タイブレーク票)を投じる権限を持っています。ただし日常的には大統領の補佐役として、政策立案の支援、外交特使、重要課題の担当など、大統領から委ねられた役割を果たすのが一般的です。

まとめ

アメリカの大統領と副大統領が対立候補ではなくパートナーとして立候補するのは、建国初期の「準優勝者が副大統領になる」という制度がもたらした政治的混乱を教訓とした結果です。憲法修正第12条以降、両者は一つのチームとして選挙戦を戦い、当選後も政権を共に運営する体制が確立されました。これは単なる慣習ではなく、国家の安定と政権の継続性を守るための、歴史に裏打ちされた制度なのです。