マックレイキングとは何か
マックレイキング(muckraking)とは、政治腐敗や社会不正を暴く調査報道・暴露ジャーナリズムを指す言葉です。20世紀初頭のアメリカでは、汚職や巨大企業の実態、劣悪な労働環境などを告発する記者たちが大きな社会的影響力を持ち、彼らは「マックレイカー(muckraker)」と呼ばれるようになりました。
「マックレイカー」の語源は馬小屋の掃除人
この言葉の由来は意外なところにあります。もともと「muckraker」という言葉は、馬車馬が主要な交通手段だった時代に、馬小屋に溜まった糞尿や泥(muck)を掻き出して掃除する人々、いわゆる「厩(うまや)掃除の人」を指す言葉だったのです。
セオドア・ルーズベルトによる揶揄としての使用
1906年、当時のアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトは演説の中で、政治スキャンダルばかりを追いかける作家やジャーナリストを揶揄するためにこの言葉を使いました。彼はジョン・バニヤンの『天路歴程』に登場する、頭を上げずに地面の汚れだけを掻き集める「肥掻き(まねき)を持つ男」になぞらえ、「天を見上げることなく、ただ汚物だけに目を向ける人々」と批判したのです。
批判されながらも定着した言葉
ルーズベルトにとっては否定的な意味合いでしたが、皮肉にもこの呼び名はむしろ当該ジャーナリストたちの誇りとなりました。アプトン・シンクレアの『ジャングル』による食肉産業の暴露、アイダ・ターベルによるスタンダード・オイル社の実態解明、リンカーン・ステフェンズの『都市の恥』など、彼らの報道は世論を喚起し、食品衛生法制や独占禁止政策といった社会改革につながっていきました。
現代における意味
今日では「マックレイキング」は、権力者の不正を追及する調査報道ジャーナリズムの代名詞として、肯定的な文脈でも広く使われています。馬小屋の掃除人から始まった一つの言葉が、民主主義を支えるジャーナリズムの象徴へと変わったのは、非常に興味深い歴史的変遷だと言えるでしょう。