歴史物語

『モッキンバードを殺すには』に「ウィルクス兄弟」を見分ける計画は登場する?作品の誤解を解説

ハーパー・リーの名作『モッキンバードを殺すには』(To Kill a Mockingbird)には、「本当のウィルクス兄弟」を見分けるために町の弁護士が考案した計画は、実は登場しません。この疑問は、別の文学作品との混同によって生じたものです。

「ウィルクス兄弟」のエピソードは別の小説のもの

ウィルクス兄弟をめぐる騒動が描かれているのは、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』です。この物語では、「王様」と「公爵」と呼ばれる二人の詐欺師が、亡くなったピーター・ウィルクスの遺産を狙い、イギリスから来るはずの弟たちになりすまします。本物の兄弟を見抜くため、村人たちは筆跡の比較などさまざまな方法を試みますが、これらはあくまでトウェインの作品内の出来事です。

『モッキンバードを殺すには』の実際の物語

一方、『モッキンバードを殺すには』の中心にあるのは、トム・ロビンソンというアフリカ系アメリカ人男性をめぐる裁判です。舞台は1930年代のアメリカ深南部。トムは、メイエラ・イーウェルという白人女性をレイプしたという無実の罪で告発されます。

弁護士アティカス・フィンチがトムの弁護を担いますが、当時の南部社会に深く根付いた人種差別と偏見により、陪審員が評決に達するのは非常に困難でした。トムの無実を示す証拠が明確であったにもかかわらず、地域の人種的緊張が法廷の判断を大きく左右したのです。

まとめ

つまり、「町の弁護士がウィルクス兄弟の正体を見分けるために考案した計画」という設定は『モッキンバードを殺すには』には存在せず、これは他の作品との取り違えによるものです。同作の核心は、無実の黒人男性をめぐる冤罪裁判を通じて、正義と偏見という普遍的なテーマを描いた点にあります。