まず、よくある誤解を整理しておきましょう。1898年2月15日にキューバのハバナ港で起きたのは、何らかの戦艦がメイン号を破壊したという出来事ではなく、アメリカ海軍の軍艦「USS メイン(USS Maine)」自体が爆発・沈没したという事件です。
メイン号は厳密には「戦艦」ではなかった
当時の海軍の分類では、USS メインは正確には戦艦(battleship)ではなく、装甲巡洋艦に近い艦種として扱われていました。しかし、一般の新聞や大衆の間では広く「戦艦」として認識され、事件後には「Remember the Maine!(メイン号を忘れるな!)」というスローガンとともに国民的な注目を集めることになりました。
新聞報道は互いに食い違っていたのか?
複数の新聞社がこの沈没事件を報道しましたが、その内容が大きく対立していたわけではありません。むしろ各紙とも、事件の重大性を強調し、国民的な憤りを表現するという点でおおむね足並みを揃えていました。
特に、ウィリアム・ランドルフ・ハースト率いる『ニューヨーク・ジャーナル』や、ジョセフ・ピューリッツァーの『ニューヨーク・ワールド』など、いわゆるイエロー・ジャーナリズムと呼ばれる扇情的な報道スタイルの新聞は、原因が判明しない段階でスペインの犯行を示唆する見出しを次々と掲載し、読者の感情を強く刺激しました。
事件がもたらした歴史的影響
こうした一斉的な報道の煽りにより、アメリカ国内の世論は急速に強硬路線へと傾き、同年4月には米西戦争が勃発することになります。
なお、爆発の原因については後年にも調査が続けられましたが、艦内の石炭庫の自然発火説と、外部から付けられた機雷による爆発説が対立し、120年以上経った今日でも決定的な結論は出ていません。