「ホロコースト(Holocaust)」という言葉は、実はユダヤ人自身が選んだものではありません。この点は多くの人が誤解しやすい部分ですが、言葉の成り立ちをたどると、その経緯がよく分かります。
「ホロコースト」の語源はギリシャ語にある
「ホロコースト」という単語は、ギリシャ語の holos(全体の)と kaustos(焼かれた)を語源としています。もともとは動物や供物を火で丸ごと焼き尽くして神に捧げる「全焼の犠牲(燔祭)」を指す宗教用語でした。
第二次世界大戦後、どのように使われるようになったのか
ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺を表す言葉として、英語圏で最初にこの語を使ったのは連合国側でした。しかし、当時はまだ定着した用語ではなく、1960年代になってようやく、ユダヤ人に対する大量虐殺を指す主要な呼び名として広く使われるようになりました。
その普及には1970年代後半に放送されたアメリカのテレビドラマ『ホロカウスト』が大きく貢献したとも言われており、以降、英語圏ではこの虐殺を表す最も一般的な言葉となりました。
ユダヤ人社会では「ショアー」が重視される
興味深いことに、ユダヤ人の間では「ホロコースト」よりもヘブライ語の「ショアー(Shoah/שואה)」、つまり「破局」「大惨事」という言葉を好む傾向があります。
その理由の一つは、「ホロコースト」が本来、神への捧げものとして焼き尽くす犠牲を意味することにあります。犠牲者たちを「捧げもの」と表現することは不適切だという批判があり、このためイスラエルなどでは「ショアー」という呼称が公式にも採用されています。
まとめ
「ホロコースト」という言葉は、ユダヤ人が意図的に選んだものではなく、ギリシャ語由来の古い宗教用語が、戦後に英語圏で徐々に定着していったものです。言葉の歴史を知ることは、この悲劇を正しく理解し、記憶し続けるための重要な一歩と言えるでしょう。