ボストン虐殺事件(1770年)を描いた有名なポール・リビアの版画では、入植者(植民地人)は武装していない一般市民の大集団として描かれています。彼らはイギリス兵が自らの町に駐留していることに対し、その場に踏みとどまって抗議する姿で表現されています。
入植者の姿勢と雰囲気
版画の中で、入植者たちは平和的で規律ある集団として描かれています。彼らは平服を着ており、武器は一切持っていません。受動的で攻撃性のない立ち姿をとり、むしろイギリス兵と話し合いを試みているかのような印象を与えます。
版画が伝えようとしたメッセージ
入植者たちの所作や表情からは、衝突を避けようとする意志が読み取れます。彼らは単に平和的に抗議する権利を行使していたにすぎない――そういう印象を与えるよう、意図的に構図が設計されているのです。
歴史的背景とプロパガンダとしての側面
ただし、実際の事件では一部の入植者が雪玉や棒切れなどを投げつけていたとも伝えられており、状況は版画ほど一方的なものではなかったと考えられています。ポール・リビアによるこの版画は、愛国派(パトリオット)の視点から制作されたプロパガンダ的な性格を持ち、世論を反英の方向へ導く強力な道具となりました。
このように、ボストン虐殺事件の描写は、事実の正確な記録というよりも、アメリカ独立革命への機運を高める象徴的なイメージとして広く普及していったのです。