古代インドで黄金期を迎えたグプタ帝国(4世紀~6世紀頃)において、社会は厳格なヒエラルキー(身分序列)によって秩序づけられていました。その基盤となったのが、古代インド以来の伝統的な「ヴァルナ制度」です。この制度は、社会を四つの身分集団に区分し、それぞれに役割分担を課すものでした。
ヴァルナ制度による四つの身分
1. バラモン(司祭階級)
バラモンは宗教儀礼をつかさどる司祭階級であり、社会の最上位に位置づけられていました。祭祀の執行だけでなく、教育や学問といった知的活動も担い、精神的・文化的な権威として高い敬意を払われていたのです。
2. クシャトリヤ(王侯・武人階級)
クシャトリヤは戦士および支配者階級です。政治権力を握り、王国の防衛や法と秩序の維持を職務としました。国王をはじめとする統治層の多くがこの身分に属していました。
3. ヴァイシャ(商工・農民階級)
ヴァイシャは商人や農民からなる生産階級です。交易・商業・農業に従事し、帝国の経済的繁栄を支える重要な役割を果たしました。グプタ朝期の活発な商業活動を背景に、この階級の存在感は大きかったと考えられます。
4. シュードラ(労働者階級)
シュードラは四つの身分の中で最下位とされ、労働者・職人・使用人などが属していました。彼らは社会に不可欠な労働や奉仕を提供する一方、他の三つの身分より劣った存在として扱われるという厳しい現実がありました。
ヴァルナ制度と並ぶ「カースト(ジャーティ)制」
グプタ社会では、ヴァルナ制度に加えて、職業と血統に基づくカースト(ジャーティ)制度も存在していました。カーストは世襲であり、個人は自らの生まれたカーストに応じた職業や社会的規範に従うことが求められました。つまり、生まれながらにして人生の進路がほぼ決定される、きわめて閉鎖的な身分社会だったのです。
まとめ
このようにグプタ帝国の社会は、ヴァルナ制度とカースト制という二重の身分構造によって強固に秩序づけられていました。この階層的な社会構造は人々の社会的役割や地位を規定し、文化や学芸が花開いた一方で、身分間の格差という不平等も内包していたのです。こうした社会体制は、グプタ朝滅亡後もインド社会に長く影響を及ぼし続けました。