アフリカの歴史

アル・ウマリとは誰か?マンサ・ムーサの莫大な富を記録した歴史家の足跡

アル・ウマリ――14世紀シリアの歴史家

アル・ウマリは、14世紀にダマスカスで暮らしていたシリアの歴史家・地理学者・旅行家です。彼の名を後世に残した最大の功績は、著書『マサーリク・アル=アブサール』(諸王国の視察の道)です。この書物は、イスラム世界を旅した際の見聞を歴史的・地理的に記録した貴重な文献として知られています。

マリ帝国とマンサ・ムーサの巡礼

この書物の中で特に有名なのが、14世紀初頭にマンサ・ムーサが築き上げたマリ帝国に関する詳細な記述です。アル・ウマリは、マンサ・ムーサが1324年から1325年にかけて行ったメッカへの有名な巡礼(ハッジ)について詳しく記しています。

巡礼の途上、マンサ・ムーサはカイロに立ち寄り、マムルーク朝のスルタン、ナースィル・ムハンマド・イブン・カラーウーンから歓迎を受けました。このカイロ訪問は、豪華絢爛な富の誇示だったと言われており、アル・ウマリによるこの訪問の記録は、マンサ・ムーサの富を知る上で最も重要な史料の一つとなっています。

金塊で語られた伝説的な富

アル・ウマリの記録によれば、マンサ・ムーサはカイロで貧しい人々や困窮者に金を惜しみなく配り、その施しは街の通りにまで及んだと伝えられています。さらに、金を積んだラクダの大規模な隊商をカイロに連れてきたことも記されており、その一頭一頭が黄金で満たされていたといいます。

アル・ウマリによると、マンサ・ムーサがメッカ巡礼のために費やした総額は約8,000万ディーナールに上り、これはおよそ200トンの金に相当する膨大な額でした。この支出により、カイロの金価格が一時的に暴落したという逸話も残されています。

歴史に残る貴重な記録

アル・ウマリによるマンサ・ムーサの富に関する記述は、マリ帝国について知られる最も重要な情報源の一つであり、当時のマリ宮廷の繁栄と豪華さを垣間見ることができる、極めて珍しい歴史資料となっています。彼の記録がなければ、世界史上最も裕福な人物とも言われるマンサ・ムーサの姿を、今日私たちが知ることはなかったかもしれません。